ペルソナ3
1997話
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そう叫ぶと、一気に前に出る。
槍を選んだのは、その背の小ささ……リーチの短さをどうにかする為なのだろう。
そういう意味では、天田の考えは決して的外れという訳ではない。
実力が圧倒的に上の相手ならまだしも、多少上下しても自分と同じ程度の力量の敵を相手にする場合、槍というのはかなりの有利さを持つのだから。
実際、時代劇とかでも戦争の時では刀を使っている者が多いが、それはあくまでも見栄えの為で、実際には槍が殆どだったって聞くし。
だが……槍が有利なのは、あくまでも自分と同程度の敵だけでしかない。
「甘いぞ」
鋭く突き出された突き……それでいながら、俺に命中しないように寸止めをされた槍だったが、俺はあっさりとその柄の部分を掴んで動きを止める。
「なっ!?」
天田は何がおきたのか全く分からないといった様子で、大きく目を見開いていた。
「な? 取りあえず天田の攻撃で俺がどうこうなる事はないから、心配するな。さて、じゃあ次だ」
そう告げて手を離すと、天田は思ったよりも力を入れて槍を引こうとしていたのか、反射的に数歩後退る。
そのまま呆然として俺の方を見ていたが、やがて再び槍を手に俺に向かって攻撃してくる。
だが、今度の一撃は全く手を抜いておらず、寸止めは考えていない一撃だ。
その一撃を回避しながら、天田の反応を見る。
こっちに攻撃が命中するしない以前に、かすり傷すら与える事が出来ないような、そんな攻撃。
突き、突き、突き、突き……そして薙ぎ。
「薙ぎ払いは、天田の力だとまだちょっと早いな。どうしても力が不足していて一撃が遅くなるし、鈍くなる」
足下を狙って放たれた薙ぎ払いは、それこそ踏んで止めてもよかったのだが……下手に力加減を間違えれば、槍を壊してしまいかねないので、大人しく跳躍して回避する。
「うわぁっ!」
受け止められると思っていたのか、天田の口からは若干間の抜けた声が上がった。
「な?」
「っと……はい」
何とか転ぶのを避けた天田が、不承不承といった様子だが、そう頷いてくる。
そうして再び天田が連続して放つ突きを、俺は身体を少し動かすだけで回避していった。……こういう風に回避してるから、点の攻撃ではなく線の攻撃の薙ぎ払いとかをやってきたんだろうな。
そのまま5分程が経ち……
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁ……」
草原の上には、完全に息を切らせた天田が寝っ転がっていた。
たった5分という訳ではなく、この場合は5分もよく動き続けられたと言うべきだろう。
槍を突くというのは、腕だけで行う行為ではなく、身体全体を使っての行動だ。
そんな全身運動を5分……天田の年齢を考えれば、寧ろ褒められてしかるべきなのは間違いない
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