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ソードアート・オンライン 宙と虹
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下層と上層を繋ぐ迷宮区の入り口にニ十分ほどかけて辿り着いた。迷宮区は基本的にRPGのお約束というべきか、やはりフィールドにPOPするモンスター達よりもレベルもソードスキルの使い方も高度だ。

そのためそれなりのレベルマージンがなければ、長時間迷宮区に潜ることにはリスクしかない。集中力が切れるし、回復アイテムも簡単に底をつく。それが俺のようなソロなら尚更。

それと最近感じていることだが、モンスター達のAIが読みづらくなっている気がする。プレイヤーの裏をかくようなソードスキルの使い方や、回避や防御をしてくるようになった。

これがこれまでのプレイヤーの戦闘傾向の学習結果なのだとしたら、これからかなりの苦戦を強いられるが、単に一体一体のAIの学習能力が上がっているならまだ対処のしようはある。

「といっても、やっぱり難しいのは事実だよなあ」

誰にともなくぼやく。
しかし、その独り言に対する返事があった。

「何が難しいんだ、エネバ?」

背後から届いた声は男の物だった。振り返って見ると装備品は全身真っ黒、髪の色も瞳の色も黒、背負っている剣すら黒、という徹底した黒色の装備で固めた《黒の剣士》ことキリトがそこにいた。

「よっすキリト。何が、と言われれば戦闘かな。ここんとこ結構モンスターのAIが読みにくくなってるだろう?」

「確かにそれは俺も感じてた。モンスター一体にかける戦闘時間が増えてきた気がするな」


やはり俺だけではなかったみたいだ。俺よりも前線にいる期間が長いキリトが言うのだから、間違いないだろう。

いわゆる俺は、後から組、という奴だった。SAOが攻略され始めた最初期から最前線で攻略しているのではなく、途中から攻略組になった奴だ。単なる結果論ではあるが、やはり最初期から攻略している人とは差があるのは否めない。
いや、ゲームのプレイ時間自体は恐らくほとんど同じだろう。ログインしたのはみんなほぼ同じくらいだろうから違いは戦闘時間と多分スタートダッシュ出来たかどうか。

でも、俺はそれについて特に言及したりはしない。目の前に、ただ一人元ベータテスターを公言した人物がいるのだから。彼が友人な以上は、俺もそれについて話す必要はない。

「やっぱそうかあ。結構厳しくなるな、これから。大丈夫かな」
「さあな。とりあえずさっさと帰ろうぜ。今、帰りだろ?」
「そういやそうだった。そうだな、帰るか」

最初の目的を完全に忘れていた。入り口で突っ立って会話していて、帰宅途中だったことを忘れていたぞ。ボケてきたかな。大丈夫かな。
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