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身の丈に迫るほどの大きな両手用の諸刃の剣を、片手で振り回す。迷宮内の照明を反射して金属が微妙に光る。眼前に立つモンスター……正式名称《デモニッシュ・サーバント》という名を与えられた骸骨剣士に剣を叩き付ける。
二年間に及ぶ戦いで研鑽した筋力ステータスを全開にした攻撃は、このダンジョンの中でもかなりの耐久力を誇っている骸骨のHPを目に見えて削る。骸骨の顔の左下に表示された安全圏を示す緑色のHPバーが黄色に落ち込む。
しかし、死がすぐそこに迫っているにも関わらず恐怖を感じることなく、左手に握った盾を構えて俺の攻撃に備えている。
「攻撃力のゴリ押しが効かないなぁ、そんなことされたら……」
思わず意思なきモンスターに、語り掛けるように愚痴をこぼしてしまう。相手は意思どころか、中身は何もない、ただのプログラムで構成されたデジタルデータのはずだが、確固たる意志を秘めて俺の命を刈り取ろうとしているように感じる。
いや実際そういうプログラムの元、彼は動いている。あの骸骨だけではなく、他のモンスター達も。アイツらがどれだけ複雑に出来ていたとしても根幹はみな同じだ。すなわち、プレイヤーを殺す、という世界の意思。
「まだまだ、死ぬわけにはいかない。アイツに会うまでは、死ねない」
現実世界でも遠く離れた場所にいる、一人の妹を思い出す。もう何年も会っていない。でもいつかまた会いたい。その子のことを思い出す度、生きて帰るという思いが強くなる。
「ふぐるあああっ!」
骸骨剣士は、一体どこにそんな声帯があるのか、雄たけびを上げると構えた盾を下げて、代わりに剣を構えた。アレはソードスキル開始の初動モーション。片手剣用のソードスキル《シャープ・ネイル》だ。鋭い爪で空を裂いたようなライトエフェクトが、照明よりもまばゆく通路内を照らす。
しかし、その剣技は何度も見て、モーションを完全に把握している。一気に後方にバックダッシュをして、こちらもソードスキルを発動させる。
「おおっらあっ!!」
両手剣ソードスキルのアバランシュだ。踏み込んで上段からの叩き付けを行う、ヒットさせれば優位を取れるかなり有能な突進系のソードスキルだ。わざわざバックダッシュしたのは、この攻撃を当てるためである。
予想に違わず、ソードスキルを躱された骸骨剣士は大きく態勢を崩した。そこへ、俺のアバランシュがクリーンヒットした。爽快感のある衝撃音が、耳に届く。クリティカル判定だ。
その一撃で残り半分を切っていた骸骨のHPを余さず削り切った。ガラス片と破砕音を迷宮にまき散らして、リザルトウィンドウが表示される。獲得アイテムと経験値を確認して窓を閉じる。
「ふー……やっぱりキツイな」
こればかりは何度やっても慣れない。いつ死ぬともしれないこの世界
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