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真田十勇士
巻ノ百二十八 真田丸の戦その十

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「武士の勝負とは違いな」
「手裏剣もありもうす」
「そして術も」
「また惑わすことも忍の術」
「そこはお気をつけ下され」
「稽古や武芸の試合はしてきた」
 木村は大坂城の中で無二の武芸者と言われてきた、特に刀と馬は見事であると言われてきているのだ。
「しかしな」
「それでもです」
「これが忍の術です」
「何時何を出してくるかわからぬもの」
「ですから」
「よいものじゃ」
 ここでだ、木村は十勇士達に笑って述べた。
「実に楽しい」
「楽しい!?」
「そう言われるのですか」
「忍の者達との戦を」
「この一騎打ちを」
「うむ、こうしてじゃ」
 今度は双刀の二刀流を一刀で防いでいる、二刀と一刀の違いがあろうともそれでも互角に渡り合っている。
「死合えることがな」
「そのこと自体がですか」
「楽しいと」
「そうだというのですか」
「そうじゃ、楽しいわ」
 こう言って今度は幻翁が放つ手裏剣をかわす。
「これが忍の戦か、そして死合いか」
「左様です」
「まさに一瞬気を抜くと命を落とす」
「そうしたものです」
「面白い、ならばな」
 それが戦ならばというのだ。
「思う存分戦おう、武士としてな」
「恥じぬ戦をする」
「そうされますか」
「最後の最後までな、拙者は若しかするとこの戦で命を落とすやも知れぬ」
 この覚悟は木村にはあった、だがそれでもだった。
 彼は前を見据えて今度は剛力が拳から放った気を刀を横薙ぎに払って切って打ち消してからそうして言った。
「しかし最後の最後までじゃ」
「その様に闘われるのですな」
「あくまで」
「今もそして軍勢を率いてもじゃ」
 逆に刀を一閃させて剛力を攻める、遠間だが気を放ってそれで切らんとしている。とはいってもその気は剛力の巨体からは想像も出来ない素早さでかわされた。
「武士として果敢にかつ正しくじゃ」
「戦われそして」
「そのうえで、ですな」
「死なれる」
「そのことも覚悟されていますか」
「拙者は武士じゃ」
 それならばというのだ。
「卑怯未練はせぬ、断じてな」
「では我等も」
「その木村殿と共に戦いましょうぞ」
「我等は忍、武士とはまた違いますが」
「木村殿のお心に惚れ申した」
 それ故にというのだ。
「そうして戦いましょう」
「それではです」
「今のこの者達との戦も」
「そうしましょうぞ」
「ではな」
 木村は刀を構えた、その左右にそれぞれ十勇士達が揃っている。彼等も構えを取ってそうしてだった。
 後藤と闘っている神老を除いた十一人の十二神将達にあらためて向かった、相手もそれを受けて向かう、彼等の死闘はさらに続いていた。
 しかし戦いが半刻程続くとだ、服部が十二神将達に言った。
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