第六章 オールアップ
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は、ほとんどが彼女によるものだ。
十メートルほども先行した彼女は、くるり後ろを振り返ると、もも上げをしながら、
「いい作品、作りたくないんですかあ!」
ぶんと両腕を振り上げた。
「そ、そりゃあ……」
ふらふらひらほれ朦朧とした意識の中で、定夫は口を開こうとした。
しかし口の中が粘っこくなっており、疲弊しきった現在の筋力で開ききること容易ではなかった。
普段は、誰に聞かれずともアニメの話をぺらぺらぺらぺら、ゾンビ並みに口の筋力だけは発達しているのではないかという定夫なのだが。
そ、そりゃあ、作りたい。
口が開かない代わりに、心の中でツィッター。
作りたいけど、
しかし、死んだら作れない。
休まねば。
せめて少しだけでも休まねば、多分そろそろ心臓が止まる。間違いなく、カウントダウンは始まっている。
心臓が止まったら、たぶん、死ぬ。「気づいたらゾンビになってましたザデッド」の中条雪麻呂でもない限り。
「すっ、少しっ、休ませて、くれ、敦子殿っ」
定夫は、はあはあひいひいの中、なんとか懇願の言葉を絞り出した。
「敦子殿」が出たついでに説明しておくが、
定夫の言葉がつっかえつっかえ聞き苦しいのは、疲労に息切れしているからであり、敦子に対してのお笑いメガトン級な喋りの固さは、この一週間でかなり取れていた。
トゲリンたちのように敦子をなんとか下の名前で呼ぶことが出来るようになってからというもの、好きなアニメを語り合うなど雑談も増え、とんとん拍子とまではいかないもののわずか数日間で普通に喋れるようになったのだ。
普通に喋る、といっても一般人健常者的な普通ではなく、あくまで素の自分を解放出来るようになったというだけのことであるが、出会ったばかりの時の喋り方を思えば格段の成長であろう。
だが、
しかし、
同じ高校に通う女子生徒と話せるようになったことによるわくわくライフなどは、これっぽっちも待ってなどいなかった。
最初はちょっぴり期待したけど、その期待は一瞬にして蹴り砕かれた。
声の担当になった敦子の指導が、かなり厳しいのだ。
鬼コーチなのだ。
演技指導は勿論のこと、なにより辛いのがこの体力作り。
腹から声を出すためにも、そして息切れしない声を出すためにも、最低限の体力はなければならない、という考えのもと、その最低限の体力をつけるのが目的だ。
最低限、であり、敦子にしてみればそれほどのことはしていないのだろう。
だがそれ以上に、定夫たちに元々の体力がないのだ。
だからこその体力作りなのであるが。
しかし、
ほんの一分走っただけ
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