第六章 オールアップ
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なんですけど」
敦子は照れたように笑う。
「でで、でではでは拝見」
携帯画面に表示されている歌詞に、目を通していく。
女子の携帯に触っていることにドキドキしながら。
『そっと目を閉じていた
波音ただ聞いていた
黄昏が線になって
すべてが闇に溶け
気付けば泣いていた
こらえ星空見上げる
崩れそうなつらさの中
からだふるわせ笑った
生きてくっていうことは
辛く悲しいものだけど
それでも地を踏みしめて
歩いてくしかないよね
笑えるって素敵だね
泣けるって素敵だね
もう迷わず
輝ける場所がきっと
待っているから
星は隠れ陽はまた登る
暖かく優しく包む
永遠の中
出会えたこの奇跡に
どこまでも飛べる きっと』
確かに、本人のいう通りクサさい。
クサいというか、単なる直球ストレートというべきか。
内容としては、人生の応援歌であろうか。
ひねていない。
敦子殿らしい、嫌味のまったくない素直な詞だ。
我々の作るアニメは、古く懐かしいものを最新のセンスで作る、ということを目指している。そう考えると、これは確かに良いかも知れない。
この歌詞が、一体どんなメロディに乗るのだろうか。
「あ、あのあのっ、きょ、曲はっ、どどっ、どどっ」
「ああ、そうですね。……ちょっと恥ずかしいけど、ここで歌ってみてもいいですかあ?」
「ど、どっ」
定夫は頷いた。
「メロディは繰り返すだけなので、一番だけ歌います。……では、行きます」
そういうと敦子は、腕を小さく振ってリズムをとりながら、歌い始めた。
敦子っぽくない、ちょっと低めの声で。
定夫は、携帯電話に表示されている歌詞を見ながら、その歌声を聞いた。
なんといえばいいのだろうか。
この懐かしい感覚を、なんと表現すればいいのだろうか。
バラードはバラードなのだが、昔のアニメ的というよりは、
なんだろう。
そうだ、合唱コンクールの歌のような、とでもいえばいいだろうか。
ゆったりとして、奇をてらわない、シンプルなメロディライン。
普段は高くほんわかした声の敦子であるが、この歌に合わせてということなのか低く抑えており、それがメロディに深みをもたらしいてる。
うっとり聞き惚れている間に、歌が終わっていた。
「お粗末でしたあ」
アカペラが終了し、高い地声に戻って恥ずかしそうな笑みを浮かべ頭を下げる敦子であったが、すぐその顔に疑問符が浮かび、小首を傾げた。
「あ、あのっ、どうかしました?」
ガタガタブルブルと震えていることに対して
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