第六章 オールアップ
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「うーん」
敦子は正座したまま、腕を組むと首を小さく捻った。
「ど、どどどむっ」
作画や演出のダメ出しでもされるのか、と、焦る定夫。
敦子はハッと我に返ると、笑みを浮かべ、
「あ、あ、すみません、また、あたしの中のほのかが、少し変化したなあと思って。でも、どこが変わったのか、言葉に出来なくて、考えてしまってたんです。……マイクを前にすれば分かるかも知れないので、後で録り直してみてもいいですか?」
「わ、わ、わかっ、分かたぬん」
ダメ出しでなくてよかった。定夫は脂肪まみれの胸をなでおろし、頷いた。
「ありがとうございます。ああ、それと、一つ気になったことがあるんですが」
「な、なな、なな、なにがでしかっ」
「もしかしたら、失礼なこと聞いちゃうかも知れないんですけど。……オープニングは、曲も歌もしっかりしてて、作画もキャラは可愛らしく演出も凝ってて、とても力が入っているのを感じるんですが、どうしてエンディングはこのように地味なんでしょうか?」
「んぬ? あっ、ああ、ああ、ももっ、そそっ、そるは単に、うう歌をっ作る能力が、我々に、ないから。……オップ、オプニングは、人から貰えたものだし、きょく曲へのっ感動がアニメをつつつる作るきっかけ、原動力になり、ひっ必然、気合の入った出来になったのだが」
「ああっ、そういえば以前に教えてもらいましたね、その経緯」
音がない以上は、なにか小細工をするよりは、開き直ってあえて地味にすることで、手作り感、アマチュア作品としての味が出るのではないかと定夫たち三人は考えた。
要するに、苦肉の策なのである。この、無音でテロップのみというのは。
「つまり、ちゃんとした歌があるなら使いたい、ということですか?」
「ま、まあ、まあっ、そそそそそそそれはっ」
エンディングテーマがあった方が、より作品は引き締まるに決まっている。
OVAなども黎明期を除いては、わざわざ三十分ものの尺で分割して話を作り、それぞれにオープニングにエンディング、アイキャッチ、次回予告、とわざわざテレビアニメ風に仕立てているくらいなのだから。
「だったら……」
敦子は顔を赤らめ、ちょっと恥ずかしそうに笑みを浮かべた。
「こ、こんな歌はどうかな、というのがあるんです。たまたま、ほのかのエンディングとして合いそうな歌が」
「え。うっ、うっ、うた?」
豚といわれたと思ったわけではない。
聞き取れていたが、返す言葉が浮かばず聞き返しただけだ。
「はい。……あたしが中学生の頃に、作ったものなんですが」
なおも恥ずかしそうな顔の敦子、自分の携帯電話を操作してメモ帳アプリで自作の歌詞を表示させると、定夫へと渡した。
「べったべたの、クサい歌詞
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