第六章 オールアップ
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の奥に味わっていた。娘が結婚する時の、父親の心境であろうか。
「そろそろ始めますか」
という八王子の言葉に、みなは顔を見合わせ恥ずかしそうな笑みを浮かべた。
それぞれ、ノンアルコールビールの缶に指かけぷしゅり、
一応、紙コップにもオレンジジュースを注いで、
パソコンモニターに、自分たちの作ったアニメを再生させ、
そして、
「ほら、総監督っ」
と八王子に背中を叩かれ、定夫は口を開いた。
「ででではっ、こるまでの長い間、お疲れ様でした! 『魔法女子ほのか』の完成を祝して、そして成功を祈って、乾杯!」
「乾杯!」
一応の総監督である定夫の音頭に、トゲリン、八王子、敦子は、手にした缶をぐいと突き出した。
定夫は、缶に口をつけ、一口含んだ。
ぐびりごくごく大人の世界。
ノンアルコールだというのに、なんだか酔いが……
定夫と同様みなも気持ちに酔ったのか、誰からというわけでもなく敦子の選んだシガレットチョコを手に手に、肩を並べて片足をベッドに乗せて、霧笛が呼んでるぜポーズ、ぷはーーーーっ。
うわ恥ずかしい。我に返って、笑い合い、宴会再開。
みな、これまでの苦労や、作品への夢、はたまた関係ないアニメの話などで、大いに盛り上がったのだった。
8
一時間ほどが経過したであろうか。
「おのおのがた、そろそろ……」
トゲリンの声に、みなの表情がきりり引き締まった。
定夫は、こくと頷いた。八王子と敦子も続く。
なにをするのか?
これから、ついに作品をアップロードするのである。
彼らの作成したアニメ、「魔法女子ほのか」を。
インターネットという名の無限の荒野に、解き放つのだ。
「あー、なんかドキドキするう」
敦子が希望と緊張のない混ぜになった笑みを顔に浮かべながら、両手で小さな胸を押さえた。
「もも、もれも」
真似したわけではないのかも知れないが、定夫もそっと手を胸にあてた。敦子より遥かに脂身たっぷりの、お相撲さんに匹敵するようなむにょんむにょんの胸であるが。
ごくり。
定夫は、唾を飲んだ。
……既にネットで一定以上の反響は得ている。
そもそも、その反響こそが本格的制作への原動力になったのだから。
従って、そこそこはイケる気がする。
だが、どうなのだろうか。
果たして、世の反応は。
それは分からない。
でも、だからこそ、やるんだ。
分からないからこそ、やるんだ。
これまで頑張ってきたんだ。
そうだ。
きっと素晴らしい結果に繋がる。
などと心に呟きながら、定夫はパソコンのマウスをカチカチ、データアップロードの準備を進める。
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