第六章 オールアップ
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、曲の修正や歌い直しを行っただろう。
そんな日々を送るうちに、さらに二週間、三週間、と時は流れ、
ついに、
オールアップの日を、迎えたのである。
6
定夫の部屋で、作品を観ている。
完成した、作品を。
四人で作り上げた、映像も、声も、効果音も、オープニングも、敦子が作って歌ったエンディングも(打ち込みは八王子)、すべてが仕上がった、技術的には拙いかも知れないがこれ以上に込める魂はないという作品を。
もう一回観ると、続いて作品をDVDに焼いて、ポーブルプレイヤーを持って外へ出て、河川敷の土手で四人、顔を寄せ合った。
場所を変え、駅前の喧騒の中で、
場所を変え、住宅街の公園ベンチで、
彼らは作品鑑賞を続けた。
作品はいつ誰がどんな環境で観るか分からないので、様々な環境で視聴チェックするのだ。という名目であるが、実際のところ、気分を味わいだけであった。
色々な場所で観ることで、初めて気分を、何度でも。
飽きるほど観ても、飽きはこなかった。
飽きはこないが、しかし空がすっかり暗くなってしまったので、再び定夫の自宅へ戻……と、その前にコンビニに寄って、サンドイッチや、唐揚げ殿、ポテトチップス、烏龍茶、ジュースなどを買い込んだ。
映像を観ながら、製作完了の打ち上げをするためだ。
7
レジ袋をそれぞれ両手に提げて、定夫の家に到着。
玄関から入ったところで、「じょじょ女子っ!」と一向に敦子の存在に慣れない山田幸美の驚く顔を尻目に、二階の部屋へ、いや血と汗と涙の染み込んだ制作本部へ。
これまでずっとマイク置き場として段ボール箱を置いていた部屋の中央に、ちゃぶ台をセッティング。
コンビニで買ってきた物をレジ袋から取り出して、片っ端から置いていった。隙間もないほどぎっちりである。
「実は拙者、先ほどこっそりノンアルコールビールなど購入してしまったでござる!」
トゲリンが、嬉し恥ずかしといった表情で、金色の缶を四本、ちゃぶ台の隙間にねじ込んだ。
「おおーっ、大人っ!」
八王子が、なんだかハイテンション気味に激しく拍手し、両腕を万歳のように振り上げた。
「あたしっ、あたしもっ、シガレットチョコ買っちゃいましたああ!」
大人といえばという対抗意識か、敦子もハイテンション気味に声を大きくし、がさごそ袋から取り出した物を高く掲げてみせた。
「うおおおおお」
と、トゲリンがネチョネチョ声で雄叫びをあげる。
そこまでハイにはなれないが、定夫も内心かなり興奮していた。
そして、やっと完成したんだなあ、と嬉しいような寂しいような気持ちをしみじみ胸
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