第六章 オールアップ
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始まらなければ、始めなければ、なにも成せない。
だから、やるしかないんだ。
やるしかないのならば、やるぞ。
おれは、やるぞ。
それがきっと、夢へと繋がる。
ザ・アニメ!
「レンさんっ! 表情だけなんだか満足げになってて、お腹ついて休んじゃってますよ! さぼってる罰で、レンさんだけあと三十秒!」
ぎゅぎゅるりぎゃあ!
現実に戻され悲鳴絶叫の定夫であった。
5
それからさらに二週間、
沢花敦子コーチによる過酷なボイスアクタートレーニングは、一日の休みもなく続いた。
小学校四年生程度の運動負荷のどこが過酷か、と思われるかも知れないが、もとがあまりに軟弱なので。
三途の川を渡る寸前といった必死の形相で特訓を続けた割には、三人の体力はさしたる向上を見せなかった。
しかし、多少はよくなったことと、発声のコツをそこそこ掴めてきたこともあって(少なくとも最初よりは格段の進歩)、いよいよ本格的な吹き替えを開始することになった。
何日かけてでも納得行くものにしたいということと、慣れ親しんだ環境の方が緊張しにくいだろうという理由で、スタジオは借りずに定夫の部屋での収録である。
声が反響しやすいよう改良した部屋で、積まれた段ボール箱に置かれたマイクを四人で取り囲み、パソコンモニターに映るアニメの動きに合わせて、声を吹き込んだ。
何日も、何日も、かけて。
敦子は、主人公を含め自分の担当するキャラの音声を一日で完璧に録り終えていたが、男性声との掛け合い部分は、みんなに付き合って何回も新たに録音をした。
収録を続けていくうちに、敦子の中でキャラへの新たな気付きも生じて、彼女だけのパートを録り直しすることもあった。
音響監督は定夫のはずであったが、いつしか敦子が完全に監督。妥協を許さぬ姿勢でリテイクの嵐。
リテイク、リテイク、演技指導、リテイクという日々を、彼らは送るのだった。
学校の休み時間には、みんなで生徒の観察をしてリアルな学生を追求し、アニメにも共通する感覚についてを話し合って、
学校帰りには、神社を見学して、神社の空気を感じ、
そしてついでに必勝祈願。
素晴らしいアニメが完成しますよーに!
定夫の部屋で、あらためて反省点や勉強したことを話し合い、本日の吹き替えに挑み、リテイク、リテイク、演技指導、リテイク。
一つの台詞について、五百回以上は録り直しをしたであろうか。
同時進行でもう一つ大切な仕事が、エンディングテーマ曲の作成である。
敦子が作詞作曲し楽譜に起こしたものを、八王子がパソコンに打ち込み、オケを作り、敦子が吹き込む。
納得いかず、二人で何度
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