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いたくないっ!
第六章 オールアップ
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ッ、でやりましょう。ハッヒッフッヘッホッ! はい!」


 ハッヒッフッヘッホッ、
 ハッヒッフッヘッホッ、
 ハッヒッフッヘッホッ、 


「お腹をよおく意識して。ハヒフヘホは腹筋使いますからね。自宅でもよおくトレーニングして、自分の身体に覚えさせて下さい。考えるんじゃなくて感じて下さい!」


 ハッヒッフッヘッホッ、
 ハッヒッフッヘッホッ、
 ハッヒッフッヘッホッ、 


「終了! では次、あめんぼあかいな。はいっ!」


 あめんぼあかいなあいうえお
 うきもにこえびも……


「舌自体はだいぶ柔らかく、回るようになってきましたね。滑舌、とてもよくなってきましたよ。……あとは、やっぱり腹式呼吸かなあ。……はい、では腹筋運動しましょう。みなさん、寝っ転がって下さい。あたしの真似をして、こんな感じに」

 四人、川に足を向けて、横ならびに寝っ転がり、後頭部で両手を組んだ。

「開始っ! はい、いーち!」

 ぐいー、と上体を起こすのは、敦子だけであった。
 定夫たちは、顔を真っ赤にしてうんうん唸っているばかりで、ぴくりとも上半身を起こすことが出来なかった。
 敦子にしてみれば、冗談なのか、というところであろうか。

 しかし、冗談ではなかった。
 いくら待てども、彼らはただの一回すらも上体を起こすことが出来なかったのである。

「うーん。……どうしても起き上がれないのなら、うつ伏せになって腕立て状態を維持、でもいいです。では、やってみましょう。あたしの真似をして下さい」

 敦子は、仰向けに寝転んだ姿勢から、くるり身体を反転させて、腕立て状態を作った。
 三人も、真似をする。ただ身体を反転させるというだけでドタンバタンかなり大変そうであったが、なんとか腕立ての姿勢になった。

「そう、そのままそのまま。こうしているだけでも、少し腹筋を使うでしょう?」
「ぐおおお!」
「ぬはあっ!」
「ぐーっ、ぐうーっ」

 少しどころか、相当腹筋にくるようで、五秒ともたず潰れてしまう三人であった。

「みなさんしっかり! 千里の道もなんとやら。もっともっと鍛えて、立派な腹式呼吸を身につけましょう! それでは腕立て腹筋もう一回っ、行っくぞおおお!」
「ぐむおおおううう」
「ぎゅぎゅるりぎゃあああ!」
「ひびいいい!」

 定夫は、ぎゅぎゅるりぎゃあなどと意味不明の絶叫を放ちながら、そして疲労と苦痛に半ば朦朧としながら、残る意識の中、考えていた。

 これは果たして、有意義な時間の使い方なのであろうか。
 ここまで肉体をいじめ抜くことに、なんの意味があるのだろうか。

 分からない。
 それは分からないけれど、
 でも、
 やらなければ、始まらない。

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