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嗤うせぇるすガキども
戦車は愛と正義を否定する 中編
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 陸上選手相手に短時間の競争であれば負けてしまう戦車たち。
 チャーチルに至っては、42.195kmのフルマラソンで世界ランカーと一緒にゴールだ。
 箱根駅伝でチャーチルチームが認められてもおかしくない。
 もしかしたら、たすきがつながらないかも。
 玖波の脚なら1,000mなど10分を切る。
 その程度の時間で、たった5両の戦車に何ができようか。
 今度こそ勝算ありと確信して、玖波は嗤う。

「フフフフフ。
 よかろう。いつスタートだ?」
『ただ今このときより』
「ならば、主君に約束を守る準備をしておけと伝えよ。
 では、行くぞ」

 玖波は、返事も待たずに人工林の中に飛び込んでいった。
 少年悪魔は、ただじっと彼の背を見ているだけだった。



 玖波が最初の100mを走りきったと同時に、聞き慣れたレイランド・ディーゼルエンジンのエクゾーストノートが聞こえた。
 これを1両あたり2基搭載している砂漠の女王、聖グロの主力、マチルダUが動きだしたのだ。

「ふん、愚図どもが」

 玖波は鼻で笑う。
 歩兵部隊に追いつかれるからという理由で、総出撃の何日も前に出発する戦車。
 やはり英国面だ。
 当然後ろからこっちを追うというマネはしてくれない。
 いくらニルギリやルクリリでもそこまで残念ではないと言うことらしい。

「ほう、僕のコースを読んでいるとはね」

 さっそく2両のマチルダが、玖波の行く手をさえぎる。
 マチルダたちは「歩兵戦車」の呼び名にふさわしい鈍足で回り込もうとするが、ちょこまか逃げまわる玖波を捕捉できるはずもない。

「だからお前らはバカなのだ」

 1両のマチルダのキューポラから半身をのぞかせる一本三つ編みお下げは、よく見知ったルクリリだ。砲塔が玖波の行く先に向けられた。

「何をする気だ?」

 2両のマチルダは、なんと主砲と同軸機銃をぶっ放してきた。
 玖波を追跡しながら、行進間で撃ってくる。
 マチルダはどこかのはっきゅんやチハのように行進間が基本なので、銃床型の俯仰装置で砲手が人力で狙いを付ける。
 足回りも「ジャパニーズ・タイプ」という。
 別に日本のマネではなく、逆に日本専用に設計してやったタイプのサスだ。
 つまりマチルダUとは、ものすごく重装甲のチハである。
 だが、対戦車でも当たらない行進間で、人間に当たるはずもない。
 まして玖波はインターハイクラスの健脚だ。
 鼻歌交じりで木々のまわりを駆け巡り、かわしつづける。
 その彼の前方から、さらに2両のマチルダが出現。
 目から怪光線を放っているのは、うすのろのニルギリだ。
 玖波は何を思ったのか、すぐそばの木に飛びつく。
 ニルギリ隊はその玖波に主砲を指向する。後ろ
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