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嗤うせぇるすガキども
戦車は愛と正義を否定する 中編
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からなかった。英語でもドイツ語でも他の何語でもない。
 人間の言葉とも思われないウォークライが、不気味に大音響で戦場を圧する。
 押し寄せてくる極端に背の低いアメリカ兵。いや、そもそも奴らは米軍兵なのか?
 連中はみな子どもぐらいの背丈しかない。それが人間とは思えないスピードで吶喊する。
 一人が機銃の餌食になっている間に他の者が集団で機銃陣地に踏み込み、体格ではるかに勝るドイツ兵たちに悪鬼の形相で飛びかかるや、取り囲んで銃剣でメッタ刺しにする。
 ドイツ軍は奴らにありとあらゆる火力を浴びせるが、いままで見てきたアメリカ兵のようにあっさりに引き下がらない。仲間がバタバタと倒れ伏しても、まったく意に介さず突き進む。
 迫撃砲弾や機銃の火線で仲間を減らしながらも、まるで狂ったかのようにひたすら吶喊する。

 よく見ればあいつらは人間じゃない! ──ゴブリン(小鬼)じゃないか。妖怪だ。
 腕をもがれようが脚を吹き飛ばされようが、お構いなしに突き進む小鬼ども。
 恐怖などというものが最初からない連中。アメリカ軍はついに妖怪まで組織して教練して軍隊に仕立て上げたというのか? 玖波にはそうとしか思えなかった。
 弾を避けようともせず突っ込んでくるなんて、人間にできるわけがない。
 背が人間よりずっと低く、そのくせ頑健で脚が速く、世界に冠たるドイツ軍に止められない。
 ……やはり妖怪の軍隊だ。人間の軍隊の常識なんか通じない。
 奴らは、連中よりはるかに体格の大きなアメリカ兵どもを何度も追い返した歴戦の勇士たちを次々血祭りに上げていく。
 ドイツ軍の誇る、1分に1,200発の弾をはき出すMG42機関銃の火線が、光の束のように走り最前列の小鬼をなぎ払う。
 しかし、いくら最強の機銃群が奴らをなぎ払おうとも、奴らは後から後からこちらになだれ込んで来る。
 狂っている! どうやってもこいつらを止めることができない。
 すでにゴブリンのあまたの屍が折り重なり、死にきれないものがうめき続けているというのにだ。
 それらを踏み越え、不気味な叫びとともに進むことしか考えていないゴブリンども。

 アメリカ陸軍の装備を身につけたゴブリンどもは、ついにティーガーたちにまで挑みかかる。
 車体機銃が、同軸機銃が、車長が身を乗り出して撃つ対空機銃が、必殺の火線を張り巡らす。
 その中を奴らの対戦車小隊が対戦車ロケット砲を構え、まるで演習でもあるかのように
平然とぶっ放す。一人が倒れれば普通小隊の歩兵が銃を捨てて「バズーカ」を構える。
 いままであんな至近距離から対戦車ロケットを撃つ、ネジの外れたアミーなんかいなかった。
 電気ノコギリが1分間に1,000発以上の火線網でゴブリンどもをバタバタとミシンのように地面に縫い付ける。それも10や20匹じ
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