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嗤うせぇるすガキども
戦車は愛と正義を否定する 前編
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一つしかない。
 この国に古くから巣くっている連中との窓口だ。
 辻なる官僚もまた、その一味に過ぎない。
 従えられて、ものを従えるのが女だと、13世紀の先覚者がすでに喝破している。
 男などエサさえあてがっておけば、いかようにも動かせるのだ。
 その中でももっとも有力なエサは、女自身だ。
 確かに戦車道は内部でつばぜり合いしているように、抗争しているかのように見えるだろう。
 北辰一刀流系、高島流砲術系の西住家と戸隠流系、根来、雑賀衆砲術系の島田家は、水と油かもしれない。
 しかしこの若様は、一つ大事なことに気がつかない。
 男が敵であるときは、女は大同団結するということを。
 卵黄を混ぜれば、水(酢酸の水溶液)と油も混ざるのだ。
 まして、西住が極道なら、島田は「魁! 女塾」だ。
 どっちもヒゲが生えていそうだ……。ブロンソンヒゲとダルマヒゲ。

 これ以上ここでそれを語っても仕方ないと悟ったのか、玖波は矛先を目のまえの女生徒それ自体に移す。
 ダージリンはいきなり肩を抱き寄せられる。
 目のまえには、玖波の顔。

「――なあ、今日こそ家にいっしょに来てくれないかなあ。
 ヘリを待たせてあるんだ。
 そして明日の朝、実家からここに直行して皆に見せつけてやろう。
 そうすれば僕と君の中は公認だ。さあ……」

 そしてそのまま口づけを迫る玖波。
 いままでなんやかやあたりさわりのない方法でかわしてきたが、もう彼女には打つ手のストックがない。しかもさんざん焦らされて導火線に火が付いているようだ。
 困ったことになった。逆らえばどんな報復をしてくるだろうか。
 その時であった……。かすかに電子音が聞こえてきた。

「ん? 僕のスマホか? この着メロ」

 ダージリンにとって幸運なことに、玖波の口説きもそこまであった。
 彼のスマホに着信があったのだ。
 発信者は「辻康太」とあった。

「ちっ、これからいいところなのに……。もしもし、何だ?」



 ……そして辻の話を聞いた玖波は、一人でヘリに乗って実家に帰ることになる。
 お飾り理事長とトップ官僚は、やはり彼の実家に車を飛ばして向かっている。
 少年悪魔は、当然その場所まで魔法で跳躍する。






 まったく要領を得ない二人の大人に業を煮やし、けんもほろろに追い返した玖波は、自室と言うには広すぎる二十畳間に少年悪魔を呼びつけた。

「ひごろから金と権力で手なずけてやっているのに、役に立たん奴らだ」

 そう吐き捨てる玖波を、感情の全くない少年悪魔の瞳が見ている。
 そこからは何の感情も思考も読み取れない。

「……というわけで、お前の出番だ。動け」
『何をせよと仰せなのでしょうか?』
「知れたこと
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