とある地獄の断罪台帳 1/2ページ
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られる地獄の中の地獄と答えた。
『……では、身分証を拝見したい』
第八階層はさすがにセキュリティが厳重なのか、係官はIDカードの提示を求める。
ハエの魔物が真っ黒なそれを提示すると、係官はかしこまった態度で
『失礼いたしました、どうぞお通りください』と折り目正しく答えて、彼らを通す。
『では、こちらへおいでください』
別な係官が、八つある洞窟のなかで最大のものに彼らを招いた。
洞窟を抜けると、そこは地獄の最深部、永遠に終わらぬ苦難のディストピア。
無間地獄だった。
『まず、第504火力発電所に行くにゃ』
第504発電所も第777工場も、この最下層の地獄にある。
赤猫は、定期巡回の前に問題のある2つのプラントを視察しようと提案する。
ここの最寄り駅から乗り換えなしで行けるのは、発電所コンビナートの方だ。
いまや無間地獄は、罪人たちの苦悶をエネルギーにして稼働する工業地帯と化している。
『最近では天国の入国審査も厳しいからな。
むしろ住民のなかでさえ再審査の結果、生前の微罪で地獄送りになる奴さえいる。
動力源と材料には事欠かないな』
『天国は毎日が日曜日で働かずに楽ができる世界にゃから、それも当然にゃ』
『ここでは時間の流れがものすごく遅い。
全プラントを回って魔界に戻っても、むこうでは1時間と経っていないだろうさ』
『逆に言えば、ここでの仕事の報酬は時給分にしかならないということにゃ』
ここは地熱が高いからか普通の鉄道はなく、すべてモノレールである。
もっとも魔界の住民には熱も冷気も効かないから、冷暖房は全くない。
彼らは問題の「第504火力発電所」に着いた。
発電所と言っても、ここには4階建てのビル程度の「プラント」が多数あって、それぞれに番号が振られているだけだ。
だから、第504発電所といっても、地上のそれとは比較にならない小さい施設だ。
しかし、発電能力は1基あたり5,000キロワット/時というかなりのものだ。
残念ながら地獄全体の発電量の9割は魔界全体で消費され、売電できる電力はかぎられている。とはいえ燃料代がただなので、それでも収益は出ている。
『本当にユニットが4つしかないな』
ハエの魔物が、耐熱ガラスのように見える容器を数える。
もちろん数えずとも一目でわかることだ。
発電ユニットは材質不明の透明容器であって、その中で炎が激しく燃え上がったかと思えば、燃え尽きるように消えるのを繰り返している。
燃えているのは当然、罪人である。
彼らは容器の中で激しく燃え、骨も残らず燃え尽きると即座に再生し、また炎上する。
それを繰り返しているのだ。永劫とも言える時間の中で。
環
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