その27
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であると述べているようなものだったのに。
誠実に、出来る限り嘘偽りなく条件を述べて、香燐の為に差し伸べられたうずまきナルトの手を振り払う事など、香燐には出来なかった。
うずまきナルトの手を取らず、のこのこと一人草隠れに帰っても、チャクラを全て搾り取られて殺された母のようになる未来だけが待っているだけだ。
だから、うずまきナルトの手に縋りついた。
逃す訳にはいかないとしがみ付いた。
その結果が今に繋がっている。
けれど、ここに至るまでに、色々と衝撃的過ぎる事が短い間に沢山あった。
だから少し、まだ夢でも見ているような気がしなくも無いのだけれど。
ずきん、と。
うずまきナルトに無理矢理噛み付かせてチャクラを吸わせた噛み痕が痛んだ。
思わずそこを、そっと右手で押さえつける。
あんな人間、初めてだった。
自分が死にそうになってるのに。
おもいっきり噛め、と、そう言ったのに。
香燐に強く腕を噛めと言われて、漸く香燐の腕を噛んできたうずまきナルトの、香燐に痛みを与えないように、そっと優しく甘噛みされた場所に感じた、あの痺れて疼くような感覚が、今も消えない。
死にそうになっていたのに。
うずまきナルトと香燐は、顔を合わせたばかりなのに。
どんなに人が良い人間でも、自分の命がかかれば豹変する。
死に物狂いで生きようと誰かの命を利用する。
それなのに。
瀕死の状態なのに、香燐を優しく気遣うだなんて、そんなの、死んだ香燐の母だけだった。
思えば出会ってからのうずまきナルトの行動は全部そうだった。
助けてくれただけじゃなくて、本気で香燐を気遣ってくれていた。
親身になろうとしてくれていた。
一緒に暮らしていた一族の人間ですら、香燐と母を草に売ったのに。
売って、そして一族全員の安全を買おうとして、そうして一族に売られた香燐だけが、今こうして生き残っている。
「一緒に生きる、か…」
まるで母ように優しい表情で微笑んで、香燐の頬を撫でたうずまきナルトの笑顔が消えていかない。
それに、綺麗な顔をしたうずまきナルトと一緒に居た男。
あの男も変わっていた。
うずまきナルトが朝で太陽なら、あの男はきっと夜で闇だろう。
鴉のように真っ黒な髪と、漆黒の瞳をしていたから。
それに、月のように綺麗な顔をしていた。
今まで見たこともないくらいに。
香燐のチャクラだけじゃなくて、香燐の言葉も役に立ったと、あの男はそう言って、香燐に礼を言った。
そんなことを言うやつなんて、初めてだった。
あの男がうずまきナルトをとても大切にしてるのは、顔を合わせて直ぐに分かっていたが、少し胸がときめいた。
役に立てて良かったと、そう思えた。
そんな風に思う事も初めてだったけれど。
「何
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