478部分:第三十七話 桜を前にしてその十二
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思うのですが」
「けれどそれがわかるよ」
微笑みだ。彼は看護婦に言った。
「そのこともね」
「わかるんですか」
「そう。わかるから」
今の真理を見てだというのだ。
「これからね」
「これからですか」
「そう。わかるから」
「そうなのでしょうか」
「考えるより見ることだよ」
これが医師が今彼女に言うことだった。
「そう。見ることだよ」
「あの患者さんをですか」
「いや、御二人をだよ」
「奥様だけではないのですか」
「そう。御主人も見るんだ」
義正もだというのだ。彼もだとだ。
「わかったね。それじゃあね」
「それでわかるのなら」
そうするとだ。看護婦もだ。
静かに頷いた。それを見てだ。
医師はだ。優しい微笑みをそのままにまた話すのだった。
「すぐにわかるからね」
「心が生きていればですか」
「身体の限界を超えられるんだ。それに」
「それにですね」
「心がどういったものかもね」
そうしたことがわかると話してだった。医師は二人を見ていた。そしてだ。
真理は今は眠り続けていた。起きる気配はない。しかし桜が咲くその時はだ。刻一刻として続いていたのである。
第三十七話 完
2011・12・14
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