477部分:第三十七話 桜を前にしてその十一
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第三十七話 桜を前にしてその十一
「はじまりなのです」
「そしてそのはじまりの為にか」
「桜を観て。そうして」
「門出とするのだな」
「そのつもりなのです」
「だからこそか」
真理の父もだ。深い目になっていた。
そしてそのうえでだ。義正と話をしていくのだった。
その彼がだ。今度はこう言った。
「ではだ」
「はい、それではですね」
「その門出に向かうのだ」
深い目、そして確かな顔になっていた。
その目と顔でだ。彼は義正に告げたのである。
「そうしてくれ」
「そうさせてもらいます」
「真理は。本当に幸せな娘だな」
このうえない優しい顔になっての言葉だった。
「君と一緒に生きられるのだからな」
「そうですね」
真理の母もだ。夫のその言葉に頷いた。
そして彼女もだ。義正を見て言うのだった。
「あの婚約の時には驚きましたけれど」
「そうだな。しかしあの頃から立派だった」
「そして今はさらにですね」
「人の心の高みは果てがない」
義正と娘を見てだ。わかったことだった。
「何処までも高潔になれるものなのだ」
「そうですね。何処までも」
「そういえばだ」
真理の父は再びだ。東洋的思想から述べたのだった。
「解脱だが」
「仏教ですね」
「解脱して終わりではないのだ」
「まだ先があるのですか」
「釈尊は解脱された」
そうして仏教を興した。しかしだ。
釈迦の人生はそれで終わりではなかった。むしろだった。
そこからはじまったと言っていい。それは涅槃に入ってからも続きだ。
釈迦如来になっている。その釈迦についてだ。彼は妻に話したのである。
「だがそれで終わりではなかったな」
「そうですね。本当に」
「今もおられる」
そのだ。釈迦如来としてだ。
「だからだ。真理もだ」
「これからもですね」
「生きる。わし等の中にもだ」
「私達の中にもですか」
「他の子供達にも教えよう」
真理の兄、そして姉達にもだというのだ。
「真理は御前達の心の中でこれからも生きるとな」
「そのことをですね」
「教えよう。是非な」
「だからこそ悲しむ必要はないのですね」
「そのことがわかった」
澄み切っていた。彼等のその顔も。
「教えてもらったな。まことに」
「そうですね。義正さんに」
「そして真理に」
このことに喜びを感じてだ。そうしてだった。
彼等はだ。あらためて義正を見てだった。
そうしてだ。こう彼に言ったのである。
「ではだ。門出をだ」
「楽しく迎えられて下さい」
「最高の門出になります」
義正もだ。澄み切った微笑みで答える。
「そうなりますので」
「そうだな。それではな」
「そうされて下さい」
こうしてだった。真理の両
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