これが漢の戦車道 F
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んな余裕がないときは砲口に糸を十字に張って、雷管の抜けた空薬莢を薬室にはめて、その穴から双眼鏡でのぞき込んで砲腔軸線を測定した。照準軸線をそれに平行にするだけなら、調整作業のための距離は必要ない。なお74式の砲口にも糸を張るための十字溝がある)
そして西の場合、「照準線なんて単なる目安」でしかなく「ここに飛ぶ」と思ったところに撃っている。ガンマンがサイトなんかいちいち見ないでピストル撃つようなものだ。
そこまで行かなければ、ひとまる以外で行進間で当てられるわけがない。
狙撃銃も戦車砲も照準眼鏡はせいぜい4倍。それ以上の高倍率にするのは、長さ的に無理だし(倍率=対物レンズの焦点距離÷接眼レンズの焦点距離。正立像にするためのレンズまで必要)視界が狭くなって使えたものでなくなる。(4倍で14度)
まあ、肉眼よりマシという程度。1,000m以上先の人間をヘッドショットできるスナイパーが天然記念物なのと同じで、大戦型戦車では、本来1,000mよりかなたは運の世界だ。
500m切れば行進間でげしげし当てる知波単は、ある意味規格外な存在だ。貫通しないけど。
しかし、いま西が撃ったのは、75mm級では17ポンドの装弾筒付き、ドイツの70口径に次ぐ威力の76.2mm高速徹甲弾型競技弾だ。距離も約400m、一番得意な距離だ。
砂けむりの一部にポカッと穴が開いた次の瞬間、KVの1両の正面にみごとに命中している。
相対装甲厚140mm程度に対して貫徹力60度で160mm。当然撃破判定。
そして、やっぱり白旗など揚がらない。
代わりに戦車の底からドバドバと燃料がまかれて、処刑装置が火をつける。
KVは、あっというまに車体下から燃え上がる炎に包まれた。
「おおーっ、リアルじゃね?」
観客はそんなことを言うが、中にいる選手はたまったものじゃない。
ハッチがロックされた戦車という名の鋼鉄オーブンの中で、いい具合に火が通る。
せいぜいレアで勘弁しないと燃料や砲弾が誘爆してしまうから、手加減はしているが。
何もすることがない鹿次は恐怖に震えているが、戦争親父その他にとってはこれが普通だ。
というか、プロリーグ男子も撃破判定食らうと次の試合に出場できない程度に処刑される。
高校生男子以下は、その場で止まった戦車を人力だけでピットに戻す程度で許されるが、その後当然、競技役員と顧問教師による公開しごきが待っている。
スクワット千回か、空気椅子1時間なんかが定番だ。
すべては観客を楽しませるためである。見ているだけで楽しい女子とはちがって当然だ。
そう、これこそが2匹の悪魔が隠していた、男子戦車道の秘密であった。
一方、横腹を見せて走っているA41を狙っているKVどもであるが、あと
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