これが漢の戦車道 E
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こいつらが乗っているのは、軽い方。それがまるでサッカー選手のように走り回っている。
(何が「標準的中戦車」だ! 標準は標準でも「戦後」の標準じゃねえか。
どう走っても頭を押さえ続けられる。速すぎる。後ろを取るなんざ無理だ!)
それでも戦争親父は、活路を求めて必死に頭を巡らせる。
「西住さん。敵も上手いな。W号なら負けていたかもしれない」
デカい頭にやせぎすの身体。遠くから見たらマッチ棒のように見えるだろうドライバーが口にしたのはそれだけだった。
ただの二重差動式操向装置が、ラリーカーのステアリングになったかのように反応する。
といっても向き変えそのものはエンジンパワーで行い、ハンドルの入力はその度合いを決めるだけのものだから、ブレーキレバーでもある操向レバーより軽い。
前進8速後進4速のセミオートマチックトランスミッションのシフトレバーが動き続ける。
止まることがないかのように。
「しかしアクセルワークが難しい。ラフに踏んだら飛び出しかねん。
キャブではなくインジェクションというのは、こんなに反応がいいのか?」
この戦車のエンジンの気化器は、キャブレターと呼ばれる霧吹きではなく、アクセル開度にダイレクトに反応して適度の燃料を吹きかける「燃料噴射装置」だ。
マッチ棒が少佐カットにいわれたことはただ一つ。
絶対に敵の射界に戦車を入れないこと。
マッチ棒は、それを自分の判断だけで実行している。
少佐カットがやっているのは、ガンナーへの指示だけだ。
「みほさん。もう5発も外してしまいました」
「華さん。仕方ありません、相手は男性です。
私も男性の反射神経や集中力には、驚いています。
そういう単一能力は、やはり女性はかなわない」
というが、彼女たちの砲撃は、ことごとく至近弾になっている。
kwk44/1戦車砲は、同クラスの75mm砲に比べて軽く頑丈だ。後座長も短い。
すばやく狙いを決められ、しかも射撃時のぶれが少ない。
「西住殿ぉ。こちらは静止射撃をした方がいいんじゃないでしょうか?」
いまは手持ちぶさたになっているくせ毛のローダーがぼやいている。
「優花里さん。止まればあっというまに後ろを取られるわ。
麻子さんが相手の進路を常に邪魔しているから、正面を向け続けられるけど。
それをしないと、決勝戦の逆のことになりかねない」
それは彼女たちが、戦車道全国高校生大会決勝戦で捨て身の螺旋状スピンターンを仕掛け、ティーガー重戦車の後ろを取って、紙一重で勝ったことをいっているのだった。
もし彼らと戦車が同じなら、負けるのは自分たちだと少佐カットは自覚していた。
一方、悪魔チームと男子
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