これが漢の戦車道 E
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砲弾を正面から弾くという経験をして、意気が上がっている。
一方、A班と悪魔隊の戦場をはさんで、高地の反対側に進出した蝗にも戦機が迫る。
B班が即座にKVたちの支援を断念し、シャーマン4両全てが蝗に向かってくるのを見て、脳筋勇者は舌打ちをする。
「現場指揮官の咄嗟行動としては優秀な判断だ。
私を討って、それから敵隊長とともにみほを倒し、KVとの交戦で損害を受けた残余と戦う。
普通なら最善手だ」
数だけ考えれば最初は4:1、次は5:1、最終的には5:3以上で戦う。
仮にKV-1Cが5両とも失われても、悪魔組が無傷ということはなく、いい作戦だ。
「ですが、これ相手にはシャーマンなら20両必要ですね」
「100両食ってもいいぞ。逸見」
彼女は確かに脳筋で石器時代の勇者、しかし単独で個別戦闘に徹するならばどうであろうか。
「蝗」は、その名のとおり、そこにあるもの全てを食い尽くすため、砲身をもたげる。
「ちいっ! 操縦、右60度、5秒後左30度」
戦争親父が細かい指示をドライバーに出す。
敵の撃った砲弾は、行進間にもかかわらず、ホラー号をかすめて飛び去る。
「戦乱の時代には、たまに出てくるんだ。男より強い女の突然変異がな。
カラミティ・ジェーン、アン・ベイリー、徴姉妹、秦良玉、ナージェダ・ドゥーロワ、エミリア・プラテル、日本でも板額御前、佐々木累、千葉さな子、新島八重なんてのがな」
「くそっ! 親父、腕が引きつりそうだ」
「頑張れ、操縦。
この勝負、気力と集中が先にとぎれた方の負けだぞ」
「親父! 敵を照準儀にとらえられねえ」
「親父、どうしてあいつらはこっちを撃てるんだ!」
それはあの車長が先にこちらの動きを読み切って、操縦と砲手に未来位置を指向させ、操縦がその規則性のない軌道をトレースできて、砲手の無念無想がすさまじいからだ。
戦争親父は、それを言葉にしなかった。オール手動の戦車では絶対に不可能なことだからだ。
逆に言えば戦争親父以外なら、男子プロ一軍スタメンでなければ倒されているということだ。
自分がまだもっているのは幸運にすぎない。今のままでは反撃する前に限界が来る。
戦争親父は、とっくに相手が女だと思っていない。人間とすら思っていない。
事実彼女たちは戦車に乗ったときは、ゼクシイのぞいて女ではない。
「足を止めてくれ。撃たせろ!」
「バカヤロウ! 止まったらその瞬間に殺られるぞ!」
砲手がじれて叫んでいる。
だが遮蔽物の何もないところで止まってしまう訳にはいかない。
手の届きそうな距離に手頃なブッシュはあるのだが、鬼戦車が行かせてくれない。
戦争親父は、血が出るほど唇をかんでいる。
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