暁 〜小説投稿サイト〜
嗤うせぇるすガキども
これが漢の戦車道 E
[7/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
あからさまな殺気がよぎる。

「操縦! 全速前進!!」

 間一髪だった。
 ホラー号が動いた直後、もといた位置に長砲身の撃った徹甲弾が降ってきた。

「操縦、左90度全速! ん?
 ……テメエは!」
「あなたの相手は、私です」

 安定の少佐カットがそこにいた。

 戦争親父にとっては、完全な不意打ちとなった。
 敵Aグループに対しKV隊を差し向け、後方をシャーマン隊が扼する。
 おそらく敵Bグループは交戦開始とともに挟撃を読んでシャーマン隊の後ろへつく。
 それをさらにホラー号で追うという、三段構えの作戦だった。
 だからB班が「2両発見」と報告したら、予定どおり挟撃させることにしただろう。
 しかしB班の後ろに出現したのは1両。当然もう1両の狙いはホラー号。
 ならばすでに交戦中のKVは捨て石にし、シャーマンだけでも合流させ、戦力を集中。
 それでも数ではタイだから、やりようがあると思っていた。
 しかし敵は、ホラー号の位置さえ読んでいて、少佐カットが自ら一騎討ちに出たようだ。
 距離わずか300m。
 
(こんなところまで接近を許すとは、俺もヤキが回ったな)

 だが、インファイトなら自分が格下でも勝機はある。戦争親父はそう思った。
 しかし、こいつはあのとき硬直していたのとはまるで別人。
 背後に真っ赤なオーラが立ち上り、眼光炯々。一分の隙すらない。
 ガキンチョが悪魔なら、コイツは俺と同じ鬼だ。面白い。
 知らず知らずのうちに戦争親父は、口の端を釣り上げ笑っていた。
 負けるかも知れない相手と戦うのは、本当に久しぶりだった。しかも女だ。

 両者は昔の剣豪同士が、移動しながら斬りかかる機を図るように走りまわり続ける。
 その間にも戦争親父の指揮を受けられないそれぞれの分隊は、ただちに非常事態と認め、即座に各リーダーが「隊長交戦中につき、これより戦車戦の指揮をとる」と宣言した。



「ディアブロより全車、右30度に旋回。行進間射撃の用意をなせ」
「弾種APCR。
 虎の子だから外すなよ、ナオミちゃん。
 砲塔旋回左18度で行ける」
「ケルビムよりディアブロ。自由行動許可されたし」
「好きにして。第1射後は全車直ちに移動、各自判断で交戦せよ。
 ディアブロは遊撃戦に移行する」
「アルカンジェロは進路を維持して、敵完全沈黙まで連続射撃とす。
 西、やれそうか?」
「我々が行進間の知波単でもあることも、野郎どもに教育してやりますよ」

 今の彼女たちは平常運転ではない。完全に戦車と一体化したマシーンとなり、天使と悪魔の連合軍と化して戦うのだ。男性陣が単騎同士では決して勝てない戦車に乗って。
 とくに知波単組は、初めて自分たちが乗った戦車が75mmクラスの
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ