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嗤うせぇるすガキども
これが漢の戦車道 E
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車長たちは、食い入るように戦争親父のタブレットの画面を見つめている。

「二手に分かれて移動、か」
「親父、ドライバーが腕っこき揃いだな。今までの女子チームの倍の展開速度だ」
「俺は別に三倍でも驚かねえ……。
 野郎のプロ一軍ならそのくらい朝飯前だ。
 むしろ、足の遅いのは戦車の方じゃねえのか?」

 車長たちは全員、戦争親父に顔を向ける。これでも遅いというのかと。

「A41。わかりやすくいうとセンチュリオンの戦中型は、歩兵戦車じゃないのに速くねえ。
 巡航戦車ってたてまえだが、実質、なみの戦車よりちょい遅いくらいだ。
 SOHCのミーティアエンジンは、回転で馬力をかせぐタイプの航空エンジン、マーリンの戦車向け仕様だ。ガスガスラー(大食らい)で、下がスカスカなんだ」

 航空機エンジンのデチューンには、ままあることだった。
 アメリカの星形改のように最初から大排気量なら、何してもトルク(駆動力)がやせるということはない。そのかわりエンジンルームがでかくなってしまうが。
 しかしマーリンは、小型で大馬力(空気抵抗を減らすため)が売りのエンジン。
 デチューン、つまり出力曲線を落としてトルクに回そうとしても限度がある。
 なぜなら、出力はトルク×回転数だからだ。回転数だけ落としてもトルクは増えてくれない。
 マーリンからミーティアにしたときも馬力は半分以下になって耐久性は増したが、という話。
 つまり、どれだけ重いものを運べるかがトルクの量であり、ある重さのものをどれだけ速く目的地に届けられるかが馬力=パワーだ。
 車体重量を左右するのがトルク。最大速度を左右するのが馬力といってもいい。
 トルクを強くしたければ、一気筒あたりのボア(直径)を増やして、ピストンストロークを長くすればいい。しかし、ピストンの重さがふえて、回りにくいエンジンになる。
 馬力を増やしたければ気筒を小さく、ストロークも短くして回りやすくすればいい。そのぶん排気量をかせぐために多気筒のエンジンにする。ところが当然トルクは薄くなる。
 さて、バイクに向いているのはどちらで、戦車に向いているのはどちらだろうか。

「つまり、重いセンチュリオンはコーナリングや荒れた地形で回転数が落ちたら、ピーキーなエンジンだからリカバリーができずに、ドン亀になる。
 そうならないのは、エンジンの回転を維持して走れるドライバーの腕だ」

 戦闘機も実際は変速機がついている。プロペラのピッチ(回転する方向に対する角度)とあわせて、離陸時にはプロペラをぶん回し、最高速度に近くなるほど回転を落とす。
 それが意識されないのは、第二次大戦時ですでにほぼオートマになっていたからだ。
 だからマーリンがどがつくピーキーなエンジンであっても、問題はなかったのだ。

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