これが漢の戦車道 C
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
N山競戦車場で開催される全国中継、賞金3倍の戦車道スペシャルマッチ。
当然鹿次の登場するイージーエイトの「ホラー号」も参戦する。
パドックでその対戦相手の女子選手たちを見て、何かを叫ぼうとした鹿次だったが、呪文が頭に響いたとたんまったく声が出なくなってしまった。
焦って口をぱくぱくさせるだけの鹿次。しかし彼の乗車「ホラー号」の車長である「戦争親父」には、鹿次が何に焦っているのかまったくわからなかった。
『よけいなことを言おうとしたからだよ』
鹿次の頭の中だけに響く声。それは例の少年悪魔のものだった。
どこにいるんだと鹿次はあたりを見渡す。
「……(あんなところに!)」
奴は、観客席の最上段、競馬なら馬主などがいるであろう、透明防弾樹脂の張り巡らされた「特等室」にいて、こちらを見下ろしている。王族の礼服のようなものを着て。
彼は、鹿次に向かってテレパスを飛ばしてきた。
『いまから沈黙の魔法を制限付きで解除してやる。
会話ができないなら通信手ができないからな。
しかし、今回の対戦相手について何か言おうとしたら、その言葉は声にならない』
つまり、自チームにも他チームのメンバーにも口外禁止ということらしい。
わかったという意思を示すために、鹿次は彼に向かって必死に首を上下に振ってみせる。
『わかったならいい。ではがんばるんだな。
負けたら君のノルマが罰金分増えるのだからな』
困ったことになったと、鹿次は思った。
もし戦争親父たちがいままでの相手の延長で舐めプレイをしたら……。ヤヴァい。
「パドック」では、両陣営の選手たちが男子側から紹介されている。
通例、男子側が戦車5両、女子側が10両で行われるのが決まりとなっている。
ところが今回はプロチーム二軍補欠とはいえ、女5両vs男10両。ファイブオンテンなのだ。
戦争親父をはじめ、男子選手たちは前例のない事なので表情の選択に迷っている。
そして案の定、女子側オッズは天井知らずになっている。
試合時間はこれも定例の3倍の6時間だが、もし女子側が1両でも生き残っていたら十万車券になるかもしれない。
しかし、もはや破れかぶれになっている樹海入り一歩手前の多重債務ギャンブラーを含めて、女子戦車の勝戦車投票券を買うものはいなかった。
ただ、「男子全滅、女子被撃破なし」を10枚ずつ買った客が2人いた。
まあ、記念のつもりで買ったのはミエミエだ。たった千円だし。
『えー、ではこれより女子チームの乗車紹介と、車長のあいさつがおこなわれます』
テレビ中継のアナウンサーが、ふだんの重賞戦のときと同じように淡々と話している。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ