これが漢の戦車道 C
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佐カットにあいさつをうながすと、やっと彼女は口を開いた。
「ぱ……」
「ぱ?」
「……はんつ、あほー……」
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おまけに、今回はしっかり噛んでいる……。
爆笑に包まれる観客席。
顔を片手で押さえる鹿次。
少佐カットは、真っ青だった顔を今度は真っ赤にして、泣きながら壇を駆け下りた。
何でコイツはどこでもそうなんだ。としかいいようがない。安定すぎる。
一方、中継席ではアナウンサーと解説が、首をかしげていた。
『乗車は「標準的中戦車あんこう号」とのことですが、いったいなんなんでしょうか?』
『うーん。W号のバリエーションではないですかね。
まあ、名前からして安い量産型なのでしょう』
どうも解説者にもわからないらしいが、どうせ競馬の解説者だって適当な事しか言わない。
そして次に登壇したのは、うってかわって厳つそうな雰囲気を漂わせる目つきの鋭い女。
来ているものは黒ベースのパンツァージャケットに、頭に黒い略帽。
鹿次は思う。
せめてお前だけはまともなあいさつをしてくれ。でないと気がおかしくなる〜〜〜!
彼女は折り目正しい姿勢で背筋を伸ばし、周囲を睥睨するようにカツカツとお立ち台に上る。
そして、日本陸軍式の腕真横90度、手のひらをのばし中指をこめかみに当てた敬礼をするとおもむろに口を開いた。いや、一呼吸置いた。
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鹿次もなんか緊張感を覚える。いや、殺気すら。しかし……。
彼女はツリ目をいきなりタレ目に変え、少しほほを染め、握った両手を口の前にもっていき、少し猫背になって、テレテレなポージングのまま、こうのたまった。
「そんなに見られたら、まほ恥ずかぴーですう。
まほがんばっちゃうから、みなさんよ・ろ・し・く。チュッ♪」
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――いきなりの投げキッス。
そして、西住まほはそのままのポーズで内股でぱたぱたと壇を下りていった。
一瞬あっけにとられる観客たちと男子選手たち。
鹿次は、全身にジンマシンができ、あまりの寒さに凍えそうになっていた……。
そして、アナウンサーと解説者は「蝗」なる奇怪な名前の戦車に「どーせハッタリだろ」と結論づけて笑っていた。
最後に登場した車長は、まだ小学校を卒業したばかりのサイドテールの女の子にみえる。
手を出しただけで重犯罪。
しかし、鹿次は今度は恐怖でガタガタ震えていた。
だって、そいつって、自分をここに送り込んできた「小娘悪魔」本人なのだから。
え? 戦車も乗れるの。とかいうレベルの話ではない。
鹿次にだけは、黒い角と羽根が見えるという、恐怖の片鱗を垣間見せて
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