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嗤うせぇるすガキども
これが漢の戦車道 A
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 腕と戦術で勝てないなら、せめて戦車ぐらい固いの持ってくればいいじゃんというのはいつわらざる感想だろう。
 毎回こうなら、男にハンデ負わせなければ、賭け自体が成立しない。

「砲弾だよ。このゲームに出てくる女選手で、ぽんぽん75mmを装てんできるのはいない。
 5発も装てんしたらへたばる。
 全国クラスのアスリートでもないかぎり、女って普通そんなもんだ。
 だからせいぜい主砲50mm級の戦車しか持ってこれん」

 そりゃそうだ。工事現場だって野郎しかいない。
 体力筋力で男女が対等なら、もっとガテン女子がいてもおかしくない。
 しかし、歴史上記録の残っているガテン女子といえば、女実業家の広岡浅子ぐらいだろう。
 男より石炭を掘りまくったそうだ。

 鹿次のポジションは副操縦士という実質通信手。
 本来なら無線だけでなく車体機銃を撃つお仕事もあるが、戦車道の試合では歩兵がいないから無用の長物だ。
 そこから次は装てん手。さらに操縦士か砲手を経験し、最後は車長になる。



 オッズも決定し、各車がコロッセオの端にある「ゲート」におさまる。
 ますます競馬のようだが、これはチャリオット競争の頃からの伝統らしい。
 塔に登った審判長が旗を振るとゲートが開き、各車が戦場目指して出撃する。
 男子チームはすぐに散開する。
 もしまとまって進撃したら女子チームがかかってこない「無気力試合」になりかねない。
 没収試合になったら、金にならないのだ。だから各個撃破の可能性を見せる必要がある。
 主催者控除のあと残った残金だけ返金してばかりいれば、客が来なくなる。
 投票券を購入して賭けに参加するのは他のギャンブルと同じだが、勝ち側を予想する単純なものから、勝車を予想するもの、もっともオッズが高いのは、当然試合終了時に残存している戦車を全て的中させるものだ。
 この試合でも、ホラー号は単勝一番人気だ。



「ふん、追ってきたな」

 バケモノ車長がハッチを開けて外を見る。
 後ろからクルセイダー4両が、当たりもしない行進間射撃を必死にしかけてくる。

「進路変更させないつもりなんだろうさ。おい、副操!」
「は、はひ」

 いきなり呼ばれた鹿次は、おもわず噛んでしまった。
 やっぱり初陣だから、緊張しているのだ。

「各車に通信。
 座標、敵の数、救援の必要なし、単独で狩りに専念しろと伝達」
「り、りょうかい」
「あと前方を注視してろ。こわーいスターリンおじさんが待ち伏せているはずだ。
 操縦、何すればいいかわかっているな」
「当然だ。あいかわらずお嬢ちゃんたちは間抜けだな」

 鹿次も戦争親父に返答する。もう噛むことはないだろう。

「わかりました。前を見張ります
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