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嗤うせぇるすガキども
今日も空は青かった(後編)
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 少年悪魔が、嘆息する。

「僕が戦車に乗らなかったことで、君たちが困ってるの?」
『ちがうわよ。あんたの女の子に対する扱いよ』

 女の子の方が呆れている。
 でも僕、何かおかしいことしてるだろうか?
 いや逆だ。僕が道に外れたことをしなかったから困ってるんだ。彼らは悪魔だから。

『いまどき、清く正しく美しいおとめちっくカップルなんか見ることになるとはね。
 そういうのは昭和の50年代でなくなってしまったと思ってたんだが』
『他の連中はこっちの期待に応えてくれたんだけどね。
 百人切りとかいってちょーしこいて、女の子と寝まっくったあげく、刺されたり』
『戦車の中でやりたい放題したあげく、痴情のもつれで履帯に引かれたり』
『そういうヤツらの魂は、真っ黒に汚れていて、回収も簡単だったけど』

 ふーん。この子たち、僕以外にも同じこと持ちかけて「収穫」をあげていたんだね。
 まあ、僕も含めて乗る方も乗る方だ。

「でも君たちは、期限が来たら僕の魂も連れて行くんでしょ?」

 少年悪魔の方が肩をすくめて『はああー』とため息をついた。
 女の子悪魔が『これを見て』と、例の羊皮紙の契約書を見せる。
 少年が困った顔をして、ぼやき始める。

『契約書の末文に「甲と乙は信義に背き不誠実に契約を履行することを約す」とあったろ。
 それがキレイさっぱり消えちゃったんだよ。このとおりに』

 彼が指さした部分には、確かに文章があったはずだった。
 そういえば、僕の署名も消えている。

『信義と誠実に生きる人間を地獄に連れて行くことはできないの』
「……」
『つまり、この契約は君の契約違反により、締結時にさかのぼって無効になってしまった。
 君にとってはいい夢、僕らにとっては上司からノルマ不達成でおしおきの悪夢さ』



 そのとたん、すべての風景が元に戻った。
 僕の姿も、彼らと出会う前の姿に戻っている。
 スマホの日付も、半年前のあの日だ。

『……もう、会うこともないわね』
『……まあ、せいぜいお幸せにな』

 そんな声が、聞こえたような気がした。
 道路の反対側に、外人の10歳ぐらいの少年と、中学一年ぐらいの女の子が
一瞬だけ、見えたような気がした。





 こんな昭和時代の少女漫画は恥ずかしくて嫌だ。 −完−
 
 
 
 
 




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『で、お前これからどうすんだよ?』
『魔界の知り合いがここで映画監督しているの。
 サブヒロインで出てみないかって、オファーがあったわ』
『……じゃあ、チャームの魔法でも使って、男どもを釣り上げてくるんだな』
『あら、そんなことしなくても、私が出演するだけで

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