今日も空は青かった(後編)
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誰かは、ぞんざいな扱いをするしかないし、どうせひいきの女の子はできる。
全員に責任を持つことなんか、初めから無理だ。
僕が好きになった女の子は、以前だったら何とも思わなかっただろう人だった。
でも、誠実で、人に優しく、裏表がなく、なにより賢明な人だった。
ただし、見かけはお世辞にも美人、……いや、十人並みとはいえなかった。
以前なら「ドンくさいメガネ」としか思わなかったろう。
自分も「キモい物体」の分際で……。
彼女がお昼に、静かな校庭わきの、だれもこない広場で手製のお弁当を食べている。
前から知っていたことだった。
僕は彼女の座るベンチのわきに座った。
彼女は当然驚いた。
「美味しそうだね。自分で作っているの?」
僕はできるだけにこやかにそういった。
まさかいきなりほめられるなんて思ってなかったんだろう。
彼女は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
そのまま、僕はベンチにもたれていた。
「……あの」
「これから、僕もここでいっしょにお昼するよ。いいでしょ?」
彼女はますます真っ赤になってしまう。
うそみたいに純情な反応だ。
こんな女の子、まだいたんだ。
次の日も、彼女はそこにいた。
今度は、僕の分までお昼を作って。
僕らは黙ったまま、お昼をともにする。
それが何日も続き、やがて少しずつ、会話らしいものもするようになる。
そしてある日。
僕らはたわいもないような話をできるまでになっていた。
でも、まだ彼女は居心地の悪さを抱えているみたいだった。
話がとぎれ、何かばつの悪そうな空気が流れる。
「……でも、こんな私じゃ、つきあってても面白くないでしょ」
ふいに彼女が、そんなことを言う。
僕の返事は決まっている。
「いや、すごく楽しいよ。毎日楽しみにしてる。だって……」
僕は彼女の目をじっと見つめる。とても真剣に。
そうでなきゃ伝わらないだろう……。
「……だって、僕は君が好きだから」
彼女は泣き出してしまった。
僕は、そっと彼女の方に手を置いて、彼女が泣き止むのを待っている。
自分でもキザなマネだなあとあきれているけど、これが僕の本心だ。
僕はあの悪魔たちのおかげで、自分でも気づいていなかった自分に出会えたのかもしれない。
下校時刻になった。
めずらしく、僕のまわりに誰もいない。
僕はあの日のように、正門から学校を出た。はずだった……。
また、あのときと同じく、周囲が暗闇になる。
そして当然「彼ら」がそこにいた。
『まったく困ったことをしてくれたものだ』
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