暁 〜小説投稿サイト〜
嗤うせぇるすガキども
今日も空は青かった(後編)
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 誰かは、ぞんざいな扱いをするしかないし、どうせひいきの女の子はできる。
 全員に責任を持つことなんか、初めから無理だ。



 僕が好きになった女の子は、以前だったら何とも思わなかっただろう人だった。
 でも、誠実で、人に優しく、裏表がなく、なにより賢明な人だった。
 ただし、見かけはお世辞にも美人、……いや、十人並みとはいえなかった。
 以前なら「ドンくさいメガネ」としか思わなかったろう。
 自分も「キモい物体」の分際で……。

 彼女がお昼に、静かな校庭わきの、だれもこない広場で手製のお弁当を食べている。
 前から知っていたことだった。
 僕は彼女の座るベンチのわきに座った。
 彼女は当然驚いた。

「美味しそうだね。自分で作っているの?」

 僕はできるだけにこやかにそういった。
 まさかいきなりほめられるなんて思ってなかったんだろう。
 彼女は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

 そのまま、僕はベンチにもたれていた。

「……あの」
「これから、僕もここでいっしょにお昼するよ。いいでしょ?」

 彼女はますます真っ赤になってしまう。
 うそみたいに純情な反応だ。
 こんな女の子、まだいたんだ。



 次の日も、彼女はそこにいた。
 今度は、僕の分までお昼を作って。
 僕らは黙ったまま、お昼をともにする。
 それが何日も続き、やがて少しずつ、会話らしいものもするようになる。



 そしてある日。

 僕らはたわいもないような話をできるまでになっていた。
 でも、まだ彼女は居心地の悪さを抱えているみたいだった。
 話がとぎれ、何かばつの悪そうな空気が流れる。

「……でも、こんな私じゃ、つきあってても面白くないでしょ」

 ふいに彼女が、そんなことを言う。
 僕の返事は決まっている。

「いや、すごく楽しいよ。毎日楽しみにしてる。だって……」

 僕は彼女の目をじっと見つめる。とても真剣に。
 そうでなきゃ伝わらないだろう……。

「……だって、僕は君が好きだから」

 彼女は泣き出してしまった。
 僕は、そっと彼女の方に手を置いて、彼女が泣き止むのを待っている。

 自分でもキザなマネだなあとあきれているけど、これが僕の本心だ。
 僕はあの悪魔たちのおかげで、自分でも気づいていなかった自分に出会えたのかもしれない。






 下校時刻になった。
 めずらしく、僕のまわりに誰もいない。
 僕はあの日のように、正門から学校を出た。はずだった……。



 また、あのときと同じく、周囲が暗闇になる。
 そして当然「彼ら」がそこにいた。



『まったく困ったことをしてくれたものだ』

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ