1話
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少し間を開けて相槌を打った。
「......御苦労。では、戻っ───「ですが」 ......? どうした?」
退室を促そうとした上官に、浩輝は揺るぎない信念が籠った瞳のまま、訴える。
「......自分は兵器としてその上官の前にある『道具』のように、艦娘を扱うことは出来ません。会ったことはありませんが、鎮守府が公開した演習の映像を見る限り、艦娘は......いや、彼女達は普通の女の子です」
「......」
浩輝の言葉に、上官は瞠目する。
「演習の時は、彼女達は兵器に見えるでしょうが、一度演習が終われば、彼女達は無垢な笑顔を浮かべるのです。それを見る度に思うのは、『このような少女達に、男である自分が守られている』という情けなさと、憧れです。彼女達には......この戦いが終わる頃には、それぞれの人生を見つけて、歩んで頂きたいと思っています。そして......戦いに縛られずに、世の中には沢山の楽しみがあるということを知ってほしいと心から願っております。といっても、自分はこうやって影から願うことしか出来ませんが」
そう自嘲気味に笑う。
「......」
しかし、言動の途中では時折優しく微笑みながら、まるで我が子を思う父親のように艦娘達の未来を願う目の前の青年に、上官は密かに思った。
(......親と子は似る、ということか)
ふっ、と笑いながら、上官は立ち上がり、浩輝の肩にその手を乗せる。
「流石だな。百点満点の返答だ」
「はい」
「......明朝の0900に校門に集合だ。その時に資料を渡す。......後に手紙にて伝える予定だったがな。気が変わった」
「そうですか。......では、小川、任務を全うして参ります」
「ああ。期待している」
浩輝はそこで回れ右して、扉の前で再び向き直り、小礼をすると静かに扉を開けて、退出したのだった。
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