1話
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「少し理解出来ませんが......命令とあらば、行くしかないでしょう。上官が気に病む必要はありません」
そう声をかけるも、怪しんで目を細めた上官は机の引き出し開けながら、こう言った。
「むむ......そうか。一応、大本営からの通達だが、念のため、道中に陸軍の奴等が襲ってくるということがあるかもしれん。これを持っていけ」
引き出しから取り出したのは、自衛隊の方で正式に使用されているM9ベレッタという拳銃だった。
少し驚きながら、「上官......これは」と、聞くと
「君は将来、これまでの実績を通して見て、きっと素晴らしい指揮官になり得る。そんな未来を担う卵に、死なれては困るのだ。それに、この頃の大本営は何を考えているかわからないからな......」
「上官......」
重みがある上官の言葉に、浩輝は少し考えてから、答えた。
「......上官、これは受け取れません」
「......理由を聞こう」
「はい。自分がこの銃を持って鎮守府の方に視察に行くと、提督や艦娘達はきっと自分達は余り信用されていないと思う筈です。正直に、この頃耳に挟む鎮守府の戦績は芳しくなく、負け戦が多いです。新聞には『敵と繋がっているのではないか』という吹き出しまででる始末で、それを提督や艦娘達は当然責任と不安を感じており、自責も影でしていることを予想すると......やはり、このたった一つの『道具』で鎮守府全体の不信感を煽るのは得策ではないと思います」
冷静に上官へ告げた理由は、この頃の世論と鎮守府の戦績から分析した上でのものだった。
そんな浩輝からの理由に、上官は暫し黙考し、やがてぽつりと呟いた。
「......じっくり考えてみれば、確かにそうかもしれないな」
そこで言葉を切り、心を落ち着かせるようにコーヒーを啜る。
「分かった。でも......くれぐれも気を付けてくれ。それと、一つ聞きたいことがある」
「ありがとうございます。それで、聞きたいこととは?」
再びコーヒーを啜った上官はゆっくりと、カップを机に置いて、神妙な顔でこう問いてきた。
「君は、艦娘のことどう思う?」
その質問は、多分鎮守府に行くに当たって出会う艦娘についての何気ない質問なんだろう。
何故、上官がその何気ない質問に神妙な表情を浮かべているのかは分からないが、浩輝は思っていることを口にした。
「艦娘は兵器です。人類が深海棲艦と唯一戦える術であり、人類の英雄です。自我や個性を持っていると聞きますが、何があっても兵器だと思います」
「............そうか」
(やはり、君もそうだったか......)
上官はそこで何処か失望したようなトーンで、
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