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横須賀鎮守府の若き提督
プロローグ
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 悲しみと怒りにうちひしがれ、消え入った声で味方に味方の被害報告をする時雨。

「どうしてっ......どうしてなんだ......」

 もう、訳が分からなくなっていた。

 命令に従わなければ解体され、それを恐れて命令に従えば従うほど、心身を削られていき、最終的には今のような轟沈寸前まで追い込まれていく。

(僕は、一体何のために戦ってきたんだ?)

 ───日本という国を再び守るため。

 そのような言葉が、瞬時に浮かんできた。

 しかし、果たしてそれは本当だったのだろうか。

(守ってきた国に......ただ良いように利用されていただけだったんじゃないのかい?)

 ───兵器に人権など存在しない。

 そんな疑問に、散々言われてきたあの言葉が胸に突き刺さる。

「僕は......僕はっ」

 その時、時雨は思わず減速し始める。

 何のために戦っているのか。

 何のために砲弾を避けながらも、必死に生きようとしてるのか。

(生きたとしても、その生きようとした努力が......どうせ報われることはない)

 鎮守府に帰還したとしても、誰もが手一杯で、誰も笑って迎い入れてはくれない。

 そしてまた言われるのだ。

 ───Sランクで遂行しろ。役立たず

 ───無駄に弾薬を消費するな

 ───お前らの言う言葉は《はい》で充分だ。私語を慎め兵器ごときが

 ───いつまでたっても出来ないのか?

 ───上官に歯向かうな。解体されたいのか?

 いつまでも。

 いつまでもいつまでも。

 ずっと。

 ───兵器に人権など存在しない

「......」

 そして、これからも

(......そうか)

 そう悟った瞬間、もう時雨は立ち止まっていた。

「白霧、夕立、初春、春雨......皆。僕、もう何で生きてるのか分からなくなったよ......ごめん......皆っ───」

 その時、砲弾の雨が着弾し、時雨を幾つもの大きな水飛沫が取り囲んだ。
  

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