プロローグ終
[6/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
.......。
さっきとは打って変わり怒気をはらんだその声に、歩みを止める。
「ありったけを持ってしても届きはしない!過ぎた望み、最初から壊れた、ただの幻想!」
......黙れよ。
ーーーーーーー1歩を踏み出す。
「醜い欲望!それをぶつける、価値のない眩いだけの光!」
ーーーーーーーまた、立ち止まる。
それ以上先は、許容できない。
衛宮士郎を構成する部分の否定は矛盾へと繋がる。
その矛盾を容認してしまえば、きっと俺は壊れてしまう。
いや、そんなもの、本当は関係ない。
なのに、なぜ?
「お前が命を賭して求めるものではない!なのに、なぜ!!」
「ーーーーーーーーーーーーーーうるっせぇ!!」
全力をもって、風を、押しのける。
握った拳に爪がくい込んで、血が出ていた。
そうだ。
知らないだなんて、そんなことはない。
全て、わかっていたことだった。
衛宮士郎にとって、なにか一つを得ようとすることは、破滅を招くことだと。
衛宮士郎は、正義の味方でなくてはならないこと。
ーーーーーーーーーそれでも、
あぁ、そうか。
わかった。
ーーーーーーーーー俺は、
「あそこにーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー辿り着きたい」
手を伸ばす。
吹き荒れる、風の向こう側に。
一歩を踏み出す。
荒れ狂う、困難の果へ。
「求めた景色。 無力な自分。 抱いた理想。叶わない夢。」
声が、遠ざかる。
「証明してみろ。」
背筋が、伸びる。
「あぁ、約束する」
問答になっていない。
「必ず取り戻せ。」
約束にもなっていない。
「たどりつく」
それでも、
「あぁーーーーーー、」
それでも、その男は。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー任せた。」
瞬間、安心したように、存在が消える。
もう声は感じられない。
風はやまない。
階段は終わりが見えない。
それでも、確かに託されたものがあった。
存在は感じられなくとも、確かに存在したことは感じられる。
生まれて17年、そんな言葉は使ったことがなかったはずなのに。
今は、まるで、生涯にわたり呟き続けた言葉のように思う。
おそらく、これこそがやつの存在。
この言葉こそ、やつの生涯。
さぁ、証明してみろ、俺。
やつの存在を、生涯を、
背負って生きる。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ