ある作者未満読者以上の場合(前編)
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扱説明書を見て、その作品を投稿するのだ』
「えー。他人に見られたら恥ずかしいです」
『大丈夫だ。そのサイトでも最近は第1話から予約投稿が出来るようになっている。
現実に還ってきてから作品ごと削除すれば問題はない』
「あのー。向こうに行ったきりで還ってこられないという良くあるパターンには?」
『心配はいらない。
もっとも向こうが居心地が良すぎて還ってくる気にならないかもしれないが、それはそれでよかろう?』
いわれてみれば、自宅警備員より二次元美少女たちと楽しい毎日の方がいいかもしれない。
では、さっそく投稿だ。
「えーと、これでよろしいでしょうか」
『うむ。作品はきちんとアップされたな。
しかし、チラシの裏の上に投稿日時がきっかり三日後とは、ずいぶん小心だな。
朝には一応還ってくるつもりなのだろう?』
「いやー。なにがあるかわかりませんからね」
『……それもそうだな』
投稿画面を確認した「天使」は指先でなにやら床に光の紋様を描く。
そのまんなかに座ればいいようなのでど真ん中にあぐらをかく。
準備オッケー。
「用意はできました。いつでもどうぞ」
天使はうなずくと、呪文を詠唱する。
『アノクタラサンミャクサンボダイ、アノクタラサンミャクサンボダイ、
アノクタラサンミャクサンボダイ……ダッシュセブン!』
うおおおお。
なんかまばゆい光が足元からー。
ホワイトアウトが消える。
うん? 学校の備品の机だなこれは。
ここは教室。男女の高校生がたむろっている。
成功だ。俺の二次作品の「大洗学園」の中にいま俺はいる。胸が熱いぜ。
女子が古色蒼然としたセーラーなのだから、男は当然詰襟だ。
襟についているのは、夢にまで見た大洗の校章。
机の備品ラベルは「普通T科」。
教室の札は「2年A組」。
やったー! あんこうの5人のうち4人と「ねこにゃー」がいる2のAだ!
そして俺は、オリ主の「大久保大和」。イケメンスポーツ万能の万年次席だぜ。
「おい、デブサイク」
誰だよ、気安く変な呼び名でなれなれしい。野郎に用はねえんだよ。
「うっせーぞボケ。この大久保大和様に何の用だ」
目のまえにいるのは、佐○大輔みたいなほおに傷あとのある暑苦しい野郎だ。
さっさと失せやがれ。
「お前、春の陽気でおかしくなったか?
大久保はあっちだろうが」
へ?
俺、オリ主じゃねえの?
そして向こうには……
……高身長イケメン優男っぽいのが、女の子と楽しくだべってやがる。
その女の子って……、転校してきたばかりのみほちゃんじゃないかー!!
俺のみほちゃんとるなー!!
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