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儚き想い、されど永遠の想い
462部分:第三十六話 遂に来たものその三
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第三十六話 遂に来たものその三

「そうしていました。それで今起きたばかりです」
「そうだったのですか」
「はい、それでなのですが」
 真理からだ。義正に顔を向けて言ってきた。その顔に初春の淡い日差しが窓のガラス越しにかかってくる。優しい白の輝きだ。
 その輝きを浴びつつだ。彼女は言ったのである。
「今からお茶を淹れましょうか」
「真理さんがですか」
「寝ていたせいか身体の調子がいいので」
 それでだというのだ。
「よかったら抹茶でも」
「いえ、抹茶よりも今は」
「今は?」
「梅にしませんか」
 兄妹達との話を思い出しながらの言葉だった。
「そのお茶を飲みませんか」
「梅茶をですか」
「はい、それです」
 微笑みだ。真理にその茶を勧める。
「それはどうでしょうか」
「そうですね。それもいいですね」
 真理もだ。義正の言葉を受けてだ。
 微笑みをさらに優しくさせてだ。それから立ち上がりだ。
 お茶を淹れに向かった。義正はその彼女と共に行く。そうして彼女に言ったのである。
「お手伝いをさせて下さい」
「ですが男性の方は」
「厨房に入らずですか」
「お茶とはいえです」
 真理が義正に問うたのはこのことだった。俗に言われていることについてだ。
「厨房ですから」
「私はそうした考えはありません」
「男の人でもですね」
「それを言えばシェフの方々はどうなるのでしょう」
 このことから話すのだった。
「そうですね。男子厨房に入らずという訳にはいきませんね」
「あれは仕事ですが」
「仕事でも料理をすることには変わりがありません」
「それならですか」
「はい、ですから私もです」
 厨房に入りだ。真理を手伝うというのだ。
「そうさせてもらいます」
「そうですか。それでは」
「二人で淹れましょう」
 そのだ。梅茶をだというのだ。
「今から」
「わかりました。それでは」
 こうしてだった。二人でだった。
 梅茶を淹れ飲む。そうしたことも楽しんだのだ。
 そのうえでだ。まただった。
 義幸を連れてそうして。梅を観に行く。去年行ったのと同じ場所だ。
 そこに行きだ。敷きものを敷きだ。
 今回は茶ではなく穏やかにだ。お握りを食べていた。シェフ達が作ってくれたものだ。おかずには野菜の煮付けや卵焼きがある。
 そうしたものを食べつつだ。真理は義正に話してきた。
「家族でこうして団欒で過ごすことは」
「楽しいですね」
「行楽ですね」
 真理は今彼等がしていることをそれだと話した。
「そうですね。これは」
「はい、これがです」
「最近娯楽として話題になっている」
「いいものです。春ならばこそです」
「行楽ができるのですね」
「西洋ではピクニックとも言うそうです」
 
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