その24
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を知らねえのか?」
思考に気をとられて、口を閉ざして答えない私に業を煮やしたのか、現れた男の人は憮然とした表情でそう言いました。
「え。どく」
男の人が発した思わぬ言葉に呆然とします。
じっと男の人を見つめると、なんだかその人は困ったように頭をかき混ぜて繰り返しました。
「そうだ。毒だ。こいつを食ったら、お前みたいなチビはそれで死んじまうかも知れねえんだぞ。知らねえのか?」
まじですか。
そんな事、今日初めてここに来た私が知るわけありません。
こくんと頷くと、然もあらんとばかりに男の人は頷きました。
「そもそもなんでお前みたいなチビが一人でこんな山の中彷徨いてんだ。一人で出歩くなって、父ちゃんや母ちゃんに言われなかったのか?」
男の人の追及に、思わず沈黙します。
何かしたいときは家の人に声をかけろとヒルゼンさんには言われてます。
私は今日、その言いつけを破りました。
でも、多分、私が声をかけたとしても、聞いてしもらえないと思うし、一度、殴られました。
ヒルゼンさんには言いませんでしたけど、それで十分です。
また声をかける選択は私には無い。
叱られているのは分かっていても、そんな事を私に言うのはヒルゼンさんだけなので、思わず視線を落として俯きます。
この人の言うことは正しいけれど、私にとっては余計な事でもある。
それでも次はせめて口に入れる前に一応九喇嘛に聞いてみよう。
俯きながらそう思った。
その時だった。
「もしかしてお前、親、居ねえのか?」
思い当たってしまったとばかりに、呆然と呟いた男の人に、私は素直に頷いた。
今のところ、この人は私に対する害意は無いし、何だか心配してくれているみたいだから。
きっとそれは、私が九喇嘛の人柱力と知るまでなんだろうけれど。
「そうか…。じゃあ、お前、誰と暮らしてんだ?」
「おじーちゃん」
「そうか、じいさんと暮らしてんのか」
安心したように破顔した男の人に、私は何だか申し訳なくなった。
だから、思わず告げていた。
「おじーちゃんといっしょだけど、おじーちゃんはわたしのほんとうのおじーちゃんじゃないの。おじーちゃんはほかげさまだから、しょうがないからわたしをほごしてくれてるの。わたし、みんなにきらわれてるから。でも、わたしがしぬとみんながこまるから」
「何だと!?お前、まさか…」
「ほんとうは、おじーちゃんもわたしのこときらいなんだとおもうんだ。だって、おじーちゃんのおくさん、わたしのせいでしんじゃったんだって。わたしがうまれたから、ころされちゃったんだって」
まだ少し胸が痛い知ってしまったばかりの事実に、私は言葉を止める事は出来なかった。
この人が、何処の誰かも知らないのに。
私の素性
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