第五話 闇の気配
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
人の動きであって常人の動きではない。訓練はされてないが、実戦慣れはしている。
そして、その女の相手をしている男は隻腕だった。
その男は訓練を施され、実戦慣れしている騎士だ。だが、隻腕のハンデは大きく、妖艶な女から繰り出される両刀の動きに翻弄されていた。
「やれやれ…面倒な相手だ」
ククリ刀のようなナイフから繰り出される斬撃は流れるように男の劒を叩き付ける。
男は体制を保ちつつ、女の動きを観察した。
どんなに複雑な動きをしていも一定の法則性のある動きだ。ましてや素人の剣は予想を遥かに上回る動きをする事もある。その事を考慮しつつ、今は攻めるより守りに徹する事を判断した隻腕の騎士だが…どうやら悪手のようだった。
…この女、疲れを知らないのか?
幾度となく振り翳されるククリ刀、息を切らさずここまで振り続けられるのは予想外だ。
最初から攻めに出ていればこんな攻防一体になる事はなかったろうに…。
「守ってばかりでは勝てなくてよ?」
「確かに、その通りだよレディ。
だが、私はこの通り隻腕でね。片腕だけでは守りに徹しながら攻めに出ることは出来ないんだ」
「ふふっ。確かに、隻腕ならそうかもね。
でも、その腰の大きな弓は何の為に使うの?」
「さぁ、それは見てからのお楽しみだ」
守りに徹していた騎士は初めて攻撃に出た。
足場の土を蹴り上げ、女の視界を奪う。女は冷静に距離を置き、二本のククリ刀で守りの体制を取る。この一瞬、その一瞬を男は逃さなかった
「────I am the bond on my Sword」
一瞬の演唱、体内の魔力を掻き集め────喪われた右腕を投影する。
構築される鋼鉄の右腕、その手に握られているのは弓矢だった。
「偽・螺旋剣U(カラドボルグ)!」
放たれた矢は螺旋を描き、女の元へ突き進む。
「────────────────ッ」
避けられない、女はそう判断し両手のククリ刀で防ごうと構える。だが、その程度の守りでは偽・螺旋剣Uを防ぎ切ることは出来ない。二本のククリ刀は螺旋を描きながら直線する偽・螺旋剣Uに触れた直後、崩壊した。
「終わりだ、女狐」
刹那、矢は爆発した。
壊れた幻想────本来、持ちえない英雄の剣を弓矢として複製し、それを爆破する事で凄まじい破壊力を得る。その破壊力は本来のカラドボルグと同等の威力を発揮し────あぁ、これはやり過ぎたかも知れない。
「加減するべき…だったか、」
余りの威力に女だけではなく、周囲の建造物も破壊してしまった。
やれやれ…これは始末書を何枚、書かねばいけないのやらと内心、溜息を付きつつも歩き始めた。ここら周囲の建造物は半壊、一応…加減はしたつもりだが、もっと加減すべきだったと反省する。
「……む?」
周囲は建物の残骸ばかりで、女の姿は見当たらなかった。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ