第五話 闇の気配
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これは僕の力ではない。
何度も経験し、何度も絶望した。
この力は…僕を弱くする。
この力は…僕の力じゃない。
この力は…僕を堕落させる。
ラインハルトは誰よりも強く、優しくなろうとした。
そこに間違いはないだろう。ただ、一つ。そう一つだけ間違いがあるとするならば…。
ラインハルト・ヴァン・アストレアは強くあろうとはしなかった。
ただ、ひたすらに強さと優しさだけを求め続けた。
自分の意思で、祖母から授かったこの力を自分の為ではなく、誰かの為に使う為に。
そこに間違いはない。ラインハルトは正しい力の使い方をしている。
強さに固執せず、慢心しない。未熟者の自分に休む暇なんて無いんだ。
そうやって生きてきたラインハルトに他の人間の気持ちなんて理解できる訳ないじゃなあか。
ラインハルトは誰かの為に強くなろうとした。
ラインハルトは誰かの為に優しくなろうとした。
だが、結局はそれだけなんだ。
誰かの為に強くなりたい。誰かの為に優しくありたい。そうやって生きてきた人間に理解できる訳は無いんだ。
彼は、他者から見れば確かに完璧超人だろう。
だが、実際は違う。
ラインハルトは強いられているんだ。
完璧な超人を演じ、偽りの自分を作り、誰よりも強く優しくあろうとし、完璧超人だと認識させるように強いられ続けてきた。彼の人生は五歳の頃から自分のモノでは無くなっていた。弱き者の達の為に完璧超人の仮面を被る、ただのピエロだ。
皆の望む正義の味方としてしか生きられない哀れな青年。
他人の為にしか動けず生きてはいけない。
誰かの命令でしか自分の存在意義を証明出来ず、こうやって今も生き続けている。
ある意味、あの少年と似ているかも知れない。
自分という存在よりも他人の命を優先する…あの少年に。
あぁ、彼等なら真の意味で分かり合えるのかも知れないね。
剣撃と斬撃。
その剣撃は空を切る。
その斬撃は空を切る。
切る。
斬る。
刃る。
刄る。
斫る。
伐る。
剪る。
揃る。
切り刻み、切刻む。
剣と劒は弾き合う。
剣と劒の質は同等、あとは所有者の実力で勝負は決まる。
その剣から繰り出される剣撃は鋭く素早い。
その劒から繰り出される斬撃は深く尖い。
どうやら両者の実力も互角のようだ。
こういう場合、勝敗の付き方は大きく分けて二つだ。
根気負けか、共倒れ。
勝者は生き残り、敗者は死ぬ。極々、単純で明快な結末だ。
「あらあら。貴方、とても面白いわね」
妖艶な雰囲気を持つ女だった。
二本のククリ刀のようなナイフを、相手の騎士の劒を叩き潰す勢いで振り回す。
その動きは訓練された者の動きではない。ある意味、素人の動きだ。だが、これは素
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