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儚き想い、されど永遠の想い
459部分:第三十五話 椿と水仙その十
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加えてだ。この詩人の名も挙げたのである。
「それにラディゲもです」
「ラディゲといいますと」
「御存知ありませんか」
「はい、どういった詩人なのか」
「ですがそれでもです」
 読むといいと話してだった。三人でだ。
 神社を後にしてだ。屋敷で詩集を読むのだった。そうしてその日を終えてだ。
 それから時を過ごしていった。その結果だ。冬が終わろうとしていた。
 その二月の末にだ。真理は笑顔で義正に話した。
「遂にですね」
「はい、冬が終わりますね」
「冬を越せました」
 そのことにだ。笑顔になり義正に話すのである。
「本当に。奇跡ですね」
「一年と言われましたからね」
 去年の冬に言われたことだ。しかしだった。
 真理はその一年を生きた。そうして見えてきたものは。
「春、ですね」
「間も無くです」
「その春なのですね」
 心から喜びだ。言う真理だった。
「その春に着けました」
「あと一ヶ月と少しです」
 義正もだ。笑顔になり真理に話す。
「それを過ごされれば遂に」
「桜ですね」
「三人で見られます。その桜を」
「そうですね。ではです」
「それではですね」
「あと少しだけ頑張りましょう」
 これが真理への言葉だった。今の義正のだ。
「桜まで」
「そうですね。本当に待ちに待った」
 そのだ。桜の季節がもうすぐだというのだ。
 そう話してだった。義正は外を見た。まだ外は寒く木に葉もない。それを見てだ。
 彼はだ。こう話したのだった。
「今は何もありませんが」
「もう少しすれば」
「木に葉が戻ります」 
 それが即ち春だった。そうしてだ。
 真理も外を見る。まだ何もない春をだ。真理は遂にだ。春まで生きた。だがそう思える中にだ。遂にそれが迫ってきていたのである。彼女に。


第三十五話   完


                2011・12・1

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