第五十四話
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された左腕を受け取った。
「……頭オカシイダロ?普通女ノ子ニ、切リ落トシタ腕ヲ渡スカイ?」
あくまで笑顔を崩さないレ級。もう戦う気は無いようだ。そんなレ級を前に、千尋は軍刀を落としてしまう。恐らく、限界が近い筈だ。
「……はっ。テメェがそれで逃がすっつったんだろ?俺の腕一本でそれなら、安い買い物だ。」
それでも、千尋はニヤリと笑う。
…………なんでだよ。
なんで、笑えんだよ。
痛ぇだろ?泣きたいだろ?
……なんなんだよ。レ級にしろ、千尋にしろ。
今、這いつくばってるだけのオレですら泣きたいのに……なんで、笑えんだよ。
「ンー、オモシロネナキミ!名前ハナンテ言ウンダイ?」
レ級の言葉に、千尋は笑顔のまま答えた。
「……千尋。七宮 千尋。」
「フゥン。千尋、ネ。覚エテオクヨ。後、ヤッパリモウヒトツ貰ウネ?」
レ級はそう言うと、千尋の右腕をグイと引き寄せて、千尋の顔に自分の顔を近付けたかと思うと―自分の唇を千尋の唇に重ね合わせた。
まぁ、あれだ。接吻ってやつだ。英語で言ったらキス。
「「「!!?」」」
俺達全員が、更に驚愕の表情を浮かべた。今回ばかりはオレも驚いた。
千尋はされるがままといった感じで、抵抗もしなかった。
レ級は数秒の間、千尋とキスした後、ゆっくりと離れた。
「……ドウダイ?深海棲艦ノ唇ハ?」
「…………冷てぇよ。」
最早、あの二人のやり取りに理解が追い付かないオレ達は、ただその異様な光景を眺めているだけだった。そんな中でも、体は動かない。動けたら、とっくにあのレ級に拳を叩き込んでる所だ。
「フフフ、イイ経験シタヨ。ソレジャア、アタシハモウ帰ラセテモラウヨ。」
レ級はそう言うと、クルリと後ろを向くと、そのまま進もうとした。
「アー、ソウダ。」
不意に、レ級は首にしていた黒と白のネックウォーマー的なものを外すと、千尋に向かって薙げて寄越した。
「アゲル。ソレヲ付ケテタラ、アタシハキミノコトヲ識別デキルカラネ。」
ソレジャア、と、レ級は後ろを向くと、今度は一度も振り返らずに、真っ直ぐ進んでいった。
その背中は、人のそれと何ら変わらなかった。
「…………あー、終わっ…………た…………。報告…………しなくちゃ…………な…………。」
千尋はそう言うと、懐の通信機を取り出そうとした。
しかし、千尋の体は、限界を超えていたようだった。
千尋は、そのまま
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