第五十四話
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
…………えっと、また夢か?
俺が立っていた場所は、真っ黒な雲に覆われた海の上だった。不思議なことに、波風はひとつもなく、雲のわりには雨も降りそうにない。
俺はそんな中、海面に立っていたのだが、艤装は付けていなかった。
「…………なんだこれ。まさかと思うけど、あのとき沈んじまって、死後の世界に来ちまったか?」
『いやぁ、違うぜ?』
そんな声が、俺の後ろから聴こえてきた。
聞いた瞬間、ドキリとした。
俺は思わず振り返り、俺の後ろにいた奴を確認した。
そこには、肌の青白い『俺』が胡座をかいていた。
「…………おいおい。何の冗談だよそれは?」
俺はおどけてそう言ってみた。そうじゃないと、受け入れようとは思えない光景だった。
『さぁな。俺にも分かんねぇよ。なんで人の姿のテメェが居るのか考えてる所だ。』
お前に分からないものが俺に分かるわけ無いだろ。
そう言おうかと思ったが、何を言っても無駄な気がして、諦めた。
『しっかし、絶望的な状況だな。レ級に大破されて回りの奴等もボロクソ。相手のレ級は小破すらできない始末。唯一の救いは護衛艦隊が離脱できてるってところか?』
…………『俺』は、嘲笑していた。
「うるせぇ。お前だってどうしようもねぇだろこんなの。」
そう。間違いなく俺達はレ級に沈められる。まさかあそこまで圧倒的な存在だとは思わなかった。どう考えてもここから逆転する方法はない。
『くっくっく。お前、切り札ならとっくに持ってるんだぜ?』
『俺』は、遠い目をしていた俺を笑っていた。
「…………切り札ぁ?」
俺は再び『俺』を睨む。『俺』はニヤッと笑った。
『だって、そうじゃねぇか。
春雨、プリンツと普通じゃない特性を持ってるのに、お前ができねぇハズがねぇだろ?』
それは、俺が人外であると言う宣言だった。
いや、知ってたけどさ。改めて言われると少し来るものがある。心のどこかでそれでも人間で居たいと思ってたのだろうか。
「…………まぁ、何ができるかはその状況にならないと分からないっぽいけどな。」
『フフフッ、気分はどうだ?』
『俺』は、あくまで嫌みっぽく笑っていた。
…………気分?
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ