458部分:第三十五話 椿と水仙その九
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第三十五話 椿と水仙その九
「ですがこれは我が国の食べものです」
「日本のですね」
「牛肉は我が国に入りました」
そうなったというのだ。
「そうしてすき焼きも生まれたのです」
「そうなりますね」
「そう思います。それにしてもこの肉は」
すき焼きの中の肉を食べての言葉だった。
「実にいいですね」
「はい、柔らかくて」
「味も非常にいいです」
その味を楽しむ。肉の味もだ。
そうしてだ。義正はその肉を食べつつ話すのだった。
「この肉はこの神戸の肉です」
「神戸でもですか」
「はい、肉牛用の牛を育てだしています」
「そうだったのですか」
「最初はどうなるかと思いました」
その味がだ。心配だったというのだ。
しかし義正はだ。実際に食べてみて今はこう言うのだった。
「ですがよくてです」
「よかったですか」
「これなら今後肉牛として売り出せますね」
「そうですね」
真理もだ。義正のその仕事の話に応える。普段はそうした話には関わらない彼女だが今回は珍しく応えた彼女だった。そうしてだ。
真理は肉をさらに食べつつだ。また義正に話した。
「普通牛肉は」
「硬いですね」
「それが困りますが」
「亜米利加ではです」
ここで義正はこの国の話を出した。
「肉は我が国のものよりもです」
「硬いのですか」
「はい、そうです」
亜米利加に行ったことがあるからだ。言えることだった。
「噛み応えがあると言うべきでしょうか」
「そこまで硬いのですか」
「ステーキですね」
肉を焼くだ。その料理の話だった。
「それはかなりの硬さでした」
「どれ位ですか?」
「ゴム位でしょうか」
「ゴム、ですか」
「はい、その位はありました」
義正は苦笑いと共に真理にその肉のことを話す。
「我が国のステーキとはそこが違います」
「そうだったのですか」
「少し以上に参りました」
そうした話をするのだった。そしてそのすき焼きを食べてからだ。今回も義幸を連れて三人でだ。佐藤が勧めた神社に向かった。そこでだ。
池を見た。そこにだ。白い水仙が幾つも咲いていた。
その丸い花びらは水面に浮かんでいる様に見える。そしてその歯と歯の間にだ。白く小さな花達が咲いているのだ。それを見てだ。
義正がだ。言うのだった。
「冬でもですね」
「こうしてお水の中にあるのですね」
「雪が降ったり氷もはります」
冬だから当然のことだ。それもだ。
だがその冬の中でも咲いている花達を見てだ。彼は言ったのである。
「ですがこうして咲いていますね」
「そうですね。それにしても」
「香りですか」
「中々強い香りですね」
水仙のだ。その香りが漂うのも感じていた。
そうしてだ。真理はその香りの中で言
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