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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
番外編
【番外編】カルラ様の受付
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でしょう」
「お前もカルラ様に顔を覚えられているだろう」
二人とも、仙人のような長く白い付け髭を顎と鼻下に貼っている。
そう。宰相は変装し、客として潜り込もうというつもりだったのである。
従者が「無駄な努力になる気がしますがね」と言いながら、治療院の扉を開けた。
正面にある受付には、誰もいなかった。
宰相の視線の先は受付から待合室のほうに移る。
待合室にはすでに中年の男性客が一人、椅子に座って……いなかった。
なぜか床に座り、ひれ伏すような姿勢で紙に何かを記入している。
「ねえ、せっかく椅子あるから。受付表は座って書いてー」
「そ、そうは申しましても……カルラ様を立たせて私が座るわけには」
「だめー。座って。マコトからもそう言われてるから。ボクがおこられるー」
「そ、そうですか……。ならば座らせていただきます」
中年男性が恐縮しながら椅子に座る。
(ん? 変なやり取りだな。どういうことだ?)
(カルラ様は街に出ることが多かったので、顔を覚えている者もいるのでしょう。相手が魔王位継承権者だと知っていれば庶民は当然畏まります)
(なるほどな)
(しかしこれは好手ですね。カルラ様が受付なら、たとえ働いているのが人間の奴隷であろうが、トラブルは起きにくいでしょう)
(……)
椅子に座った男性が受付表を書き始めると、カルラは変装した二人のほうにやってきた。
「おはようございますー。えっと、いまここにいる人以外にも待ってるひとがいるから、整理券を……あれ? アルノーと、いつもいっしょにいるひとだー。なんでそんなかっこしてるの?」
(宰相様。早速おバレあそばされていますが?)
(な、なぜだ……?)
「今日は『しさつ』なの?」
「あ、ああ、いえ。視察というほどでもありません。チラッと中を見たいと思っただけです、ハハハハ」
「そうなの? 何か用意したりしなくていいのー?」
「いえいえ! 大繁盛でお忙しいと思いますので。特にカルラ様にご対応していただくことはございません。すぐに帰りますから」
「はーい」
宰相は逃げ出すように治療院から撤退したのだった。
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