450部分:第三十五話 椿と水仙その一
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第三十五話 椿と水仙その一
第三十五話 椿と水仙
新年になった。その時にだ。
義正は真理と共に雑煮。関西風のそれを食べながら真理に話すのだった。
「お餅もですね」
「身体にとてもいいですね」
「喉に詰まらせれば危険ですが」
このことは少し苦笑いになって話す彼だった。
「ですがそれでもです」
「沢山食べてそうして」
「精をつけて下さい」
何つけてもそれだった。
「そうして下さい」
「はい。そしてそれは私だけでなく」
真理は義正の言葉に応えつつ彼を見てだ。そうしてだった。
そのうえでだ。彼にこう言うのだった。
「義正さんもまた」
「そうですね。私達のことですから」
「お餅に。それに」
餅の中にある様々な野菜も見てだ。二人は話していく。
「お野菜もですね」
「そうです。食べましょう」
「いいものですね。お雑煮は」
目を細めさせてだ。真理は義正にこんなことも話したのである。
「食べているとそれだけで」
「身体が温まりますね」
「これがいいのですね」
「身体は冷やしてはいけません」
このことは既に漢方医学でも言われていることだ。この時代の医学からではない。
「ですから。それに真理さんは」
「私は余計にですね」
「いささか無理をされてもいいのです」
そうしてもだというのだ。
「召し上がって下さい」
「はい、食欲はあります」
「それはおありですね」
「ですからかなり食べられます」
「新春からそれはいいことですね」
真理のその言葉を聞いてだ。義正も笑みを浮かべる。
そしてその笑みでだ。真理にこう話すのだった。
「まずは食べてからですから」
「そうですね。それに新春ですね」
「はい、そうです」
「春ですか」
その言葉にだった。真理は笑みになってだった。
「春なのですね。既に」
「そうですね。暦でのことですが」
「春ですか」
「桜はありませんが春です」
「春がこれだけいとおしいと思ったことはありません」
今の真理だからこそだ。そうなることだった。
そのことを自分で言葉にしつつだ。義正に話すのだった。
「待ち遠しくもあります」
「今か今かと」
「どうしてもそう思ってしまいます」
「ですが暦のうえでは」
「はい、きましたね」
新春、それがだった。
「私は春を迎えられたのですね」
「ではその春に」
「はい、桜が咲くまで」
完全な春になる、その時にまでだというのだ。
「私はこの世にいますので」
「そしてそれからは」
「義正さんの、皆さんの中に生きます」
死ではなかった。そこにあるのは。
「新しい生の中に入ります」
「そうして下さい。人の身体はなくなるものですが」
「心はですね」
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