巻ノ百二十七 戦のはじまりその十一
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「それこそな、しかしな」
「若しもですな」
「櫓に当たるか長きに渡ってその凄まじい音を聞かれるとな」
「その音が問題ですな」
「それじゃ、大砲は弾で攻めるよりもじゃ」
球で城の壁や櫓を壊せる、確かに大坂城の堀ではそれも極めて困難であるがだ。
「音で攻めるものじゃ」
「父上がいつも言っておられますな」
「そうじゃ、弾が落ちたりものを壊す音も撃った時の音もな」
「凄まじいので」
「まずで雷じゃ」
それが落ちた時の様にというのだ。
「凄い音じゃからな」
「それで、ですな」
「迂闊にじゃ」
まさにというのだ。
「聞くものではない」
「しかもそれが長く続くと」
「余計に心に堪える」
「若し茶々様が堪えられると」
「戦は危うくなる、ましてやあの方はじゃ」
茶々、彼女はというと。
「非常にお気が強いな」
「はい、それがしが見ましても」
その通りだと答えた大助だった。
「あの方は」
「そうじゃな、しかも激しいご気質じゃ」
「常高院様や幕府のご正室様とは全く違うとか」
妹二人とは、というのだ。彼女達は姉ではなく母であるお市の方にその気質が似たのであろうと言われている。
「どうにも」
「そうじゃ、しかしな」
「それでもですか」
「あの方はその反面脆い」
「非常にお気が強くとも」
「すぐにお心が折れられる方の様じゃ」
幸村は自身が見た茶々について我が子に話した。
「若し何かあればな」
「そこで、ですか」
「お心が折れられる、だからじゃ」
「大砲の音にですか」
「弱いであろう、実はこの城の女御衆が言っておるそうじゃが」
この話もするのだった。
「あの方は雷がお嫌いとのことじゃ」
「雷が」
「あの音が随分とお嫌いらしい」
「そうなのですか」
「そして燃えるのもな」
「では大砲は」
大助もここまで聞いてわかってだ、父に問い返した。
「あの方にとっては」
「鬼門じゃな、大御所殿がそこまでご存知かはわからぬが」
「茶々様を攻めるには」
「これはかなり厄介なことじゃ」
まさにというのだ。
「だから出来ればな」
「大砲をですか」
「何とかしたいが」
「ですが我等は」
「流石にこの真田丸とその外にまでしか手が回らぬ」
幸村は大助に苦々しい顔で述べた。
「大砲を他の方角から撃たれるとな」
「東や西、北から」
「それだけで危うくなる」
「では余計に」
「茶々様には本丸にいてもらいたい」
そして戦にも口出ししてもらいたくないというのだ。
「絶対にな、しかしな」
「それはですな」
「あの方をお止め出来る者がおらぬからな」
「父上もですな」
「拙者は所詮外様じゃ」
大坂ではというのだ。
「大坂譜代の大野修理殿も止められず片桐殿に至っては
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