迷子は不幸な幸運艦?
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「そうか、解った。ご苦労さん。気を付けて帰って来てくれ」
そう答えて無線機を切る。煙草を咥えて火を点け、フーッと紫煙を吐き出す。先程の通信は出撃していた連合艦隊の旗艦である金剛からの通信だ。
冬の大規模作戦は、秋に引き続きレイテ沖海戦に準えた作戦要綱だった。レイテ湾に再び侵攻してきた深海棲艦を押し戻し、更に深く攻め入る為の作戦ーー……その最終段階として、金剛は曾ての栗田艦隊のメンバーを率いてサマール沖へと出張っていた。そしてついさっき、無事に巣くっていた姫級の撃沈を確認。帰投するとの連絡を受けた。
「……やれやれ、これで漸く折り返しか」
誰に言うでもなくそう呟いて、執務机の上にある『捷号作戦・改 作戦要綱』と書かれた書類に目をやる。この後は曾ての捷号作戦を準えて作戦を展開し、更に深く攻め入る算段を大本営は付けているらしい。
「それにしても、今回は作戦への参加国籍が多かったですね」
「あぁ、艦娘を保有していると公言している国の殆どが参加してたからな。艦娘の見本市かっての」
報告書を纏めていた大淀の呟きに、溜め息混じりに返す。夏の大規模作戦……欧州打通作戦によって、スエズ運河が人類の手に戻った。それにより、欧州とのシーレーンによる往来が可能となった事で欧州との貿易が活発化。当然ながら手練れの艦娘が護衛を引き受けてくれるとあって、ウチもかなり稼がせてもらっている。それはいい。しかし、デメリットというのはどんな事にも付いて回る物で、欧州産の艦娘……特にドイツとイギリスの量産が活発化して、頻繁に護衛船団が見られるようになってきた。
「まず間違いなく、ウチの真似ですね」
「ま、それもあるだろうな。だが、それよりも艦娘を持たない国への顔見せ兼セールスの意味合いが強いと思うがな」
軍事部門というのは兎角金が掛かる。それは裏を返せば売る側からすると非常に儲かる市場、という事になる。ましてやスエズ運河が通れるようになるまではほぼ日本の独壇場だった艦娘という新しい軍需産業だ、一口噛もうと政府ぐるみで躍起になっても仕方ない。
「その割にはイタリアが噛んでこないのが意外ですね?戦艦2種に正規空母1、重巡2、駆逐艦1。航空戦力も備えた艦隊が組めますよ?」
「まぁ、イタリアは工業力低いしなぁ……それに、政情不安でゴタゴタらしいぞ?」
そんな往来が激しくなったスエズ方面の影響か、ウチに忍び込もうとする産業スパイ(自称)の皆さんが爆発的に増えた。そりゃもうネズミの大繁殖か、って位に増えた。当然ながらウチの警備班が片っ端から取っ捕まえて、臨時ボーナス出まくりのウハウハ状態だったりする。こっちはその処理のせいで仕事が増えてゲンナリしているが。
そんな話は置いておくとして。
欧
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