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儚き想い、されど永遠の想い
442部分:第三十四話 冬の花その六

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第三十四話 冬の花その六

「そしてそこにあるのはです」
「その都度変わってもですね」
「根にあるものは一つです」
 それはだというのだ。
「道、それにあるものは」
「心ですね」
「お茶は心だと思います」
 縁側に正座し気品のある微笑みでだ。婦人は述べた。
「それが根底にありますね」
「はい。そうですね」
「八条さんはどうやら」
 義正を見てだ。婦人はだ。
 微笑みのままでだ。こうも言うのだった。
「お茶がおわかりですね」
「お茶がですか」
「そして人の心が」
「いえ、私は」
 ここではだ。義正はだ。
 謙遜してだ。こう婦人に答えたのだった。
「そうしたことはとても」
「いえ、おわかりにならないならです」
 それならばだというのだ。婦人はだ。
 優しい微笑みでだ。彼に話した。
「このお茶を美味しくは感じません」
「お茶をですか。この」
「先程も申し上げましたがお茶は心です」
 だからこそだというのだ。
「ですから八条さんはです」
「人の心がです」
「おわかりです。奥様はそのことを御存知で」
 義正の母、そして彼女にとっては友人のだ。
 その彼女もだとだ。婦人は言うのだった。
「ここを紹介して下さったのでしょう」
「私が人の心をですか」
「これは人生の経験とです」
 そしてだというのだ。
「その人の御心に確かなものがあってこそです」
「そうしてですか」
「わかるものだと思います」
 こう義正に、そして真理に話す。
「奥様もそうですね」
「私もですか」
「はい。伴侶はその人に相応しい方がなります」
 いい相手にはそうした相手がというのだ。これは男女に共に言えることだともいうのだ。
「ですから奥様も」
「そうなのですか」
「このお茶を美味しいと思われましたね」
「はい」
 これはその通りだった。真理も答える。
「とても」
「だからです。若し御心がなければ」
「どうなっていたでしょうか」
「このお茶は美味しいと感じず」
 そしてなのだった。
「ただのお茶だと思われていたでしょう」
「そうなっていましたか」
「そうです。何度も申し上げますがお茶は心です」
「それならばですね」
「心がわからない人にはお茶はわかりません」
「だから。私も」
「はい」
 その通りだとだ。婦人は真理に答えた。
「そうなのです。ではです」
「もう一杯ですか」
「そのお茶を」
「はい、如何でしょうか」
 自信の碗を持ってだ。婦人は二人に尋ねてきた。

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