追憶 ハードラックの誓い
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ウォリス・ウォーリックが追随する。
彼もまた人形師の茶番に気づいていたのだろう。
だが、仲間の分裂を茶番ですらでっちあげて維持しようとする人形師の涙を見て、この仲間たちと騒ぐのは悪くなかったと思う自分に気づいてしまっていた。
「帝国とは戦争をしている間だ。
殺し殺されは文句も言わん。
だが、それを影から操ろうとするその根性が気に食わん」
フレデリック・ジャスパーが、怒気を秘めたまま呟く。
それに追随したのはジョン・ドリンカー・コープだった。
「奴らに一泡吹かせないと、天国のアッシュビーも浮かばれん。
何か良い手はないか?」
「ある」
この瞬間を人形師は待っていた。
フェザーンという敵を利用して、730年マフィアをそのまま派閥として維持し続ける瞬間を。
死んだアッシュビーには死後罵られるなと心のなかで自虐しながら、人形師はその策を告げる。
「アッシュビーが死んだ事で、同盟軍の人事が一気に動く。
宇宙艦隊司令長官の椅子が空いた事で、椅子取りゲームが発生する。
アッシュビーの死の責任を世間は問うだろうから、おそらく統合作戦本部長も退任する。
この二つの椅子、俺達で奪ってしまおう」
「おい。
それはクーデターじゃないのか?」
さすがに話がやばくなったと感じたアルフレッド・ローザスが窘めようとするが、人形師はただ笑って合法性をアピールする。
「悲しいことに、合法だよ。
俺たちより上位の候補者が勝手に辞退するだろうからな」
人形師は床に落ちていたレポートを拾い上げる。
反730年マフィアの将官のかなりの数がフェザーンからの利益供与を受けていた証拠が書かれた紙を。
少なくとも彼がハイネセンに残っていたのは、何が起こるかわからないこの一斉摘発を自分の見える場所で行いたかったからだった。
「おそらく政府はアッシュビーの死を糊塗する為にも俺たちの誰かを昇進させ、俺達の仲を裂こうとするだろう。
だから、今のうちに会って話をしておきたかった。
で、この作戦を通して欲しい」
人形師は人形に命じて、一つの作戦案が書かれたレポートを皆に手渡す。
読み終わったヴィットリオ・ディ・ベルディーニが叫ぶ。
「帝国領内進攻作戦だって!?」
「ああ。
こっちはアッシュビー一人死んだだけで帝国軍は艦隊殲滅なんだが、奴らは勝ったと大騒ぎしている。
奴らの酔った顔に冷水をぶっかけてやれ」
「ならば、その作戦の指揮官はお前だ。
人形師」
その言葉は、ファン・チューリンの口から出て、ウォリス・ウォーリックが追随する。
その口調は、アッシュビーが居た時の口調に戻っていた。
「いいな。
お前は、留守番だ
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