追憶 ハードラックの誓い
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だった。
「待て。
この情報、同盟情報局経由じゃないのか!?」
「あいにく俺の私設スパイ網でね。
そもそも、こんな事をする羽目になったのは、数度に渡る同盟の情報流出が原因なんだよ」
人形師は淡々と嘘を語る。
だが、その嘘を嘘と見抜けぬ人間しか居ないのならば、その嘘は本物になる。
「あいつ、えらく敵に名前を売っていただろう?
そうする事で帝国の敵愾心を煽って、戦略や戦術の思考を誘導していたんだよ。
その観測のためにはどうしても、帝国側に観測する為のスパイが必要だった」
「読めたぞ。
そのスパイってのは、お前の後ろにいる人形たちか」
「ご明察」
ファン・チューリンの指摘に人形師は嗤う。
仲間に嘘を吐き続ける己の姿を嗤うのにその仲間たちは気づかない。
「この人形、帝国貴族でも愛用者が出てきている特注品でな。
帝国も馬鹿では無いから、中のプログラムはいじっているみたいだが、やり方は色々とあってな。
そこは機密なんで勘弁してくれ」
アルフレッド・ローザスが話を元に戻す。
少なくとも、聴き逃してはいけない台詞が人形師の口から出ていたからだ。
「情報流出!?
それは本当なのか?」
その問いかけに人形師は後ろに控えていた人形に命じて、レポートを彼らに見せる。
会戦の数ヶ月前からフェザーンでは戦略資源が高騰し、それを帝国に高値で売りつけている事実が全てを物語っていた。
フレデリック・ジャスパーがレポートを床に叩きつけて叫ぶ。
「フェザーンの野郎!!!!!」
『アッシュビーが殺された可能性がある』はあくまで憶測だった。
だが、それに乗じて暗躍していたフェザーンの影は、商業活動を越えて政府要人や軍内部にすら浸透していた。
彼らに少なくない金銭的供与の証拠が載っていたレポートを踏みつけて人形師は続ける。
「つまり、アッシュビーはやり過ぎたという訳だ。
同盟と帝国の間で甘い蜜を吸い取るフェザーンからすれば、アッシュビーのこれ以上の勝利は望んていなかった。
俺たちを嫌っている連中に接触しているのはそれが理由だろうよ」
そこで人形師は一度言葉を区切る。
ぽたりと涙が床のレポートに落ち、水滴が紙に染み込む程度の時間、彼は黙ったままだった。
「すまない。
もっと俺が奴らの尻尾を早く掴んでいれば……」
「お前は悪くない」
最初に言ったのはファン・チューリンだった。
おそらく彼は人形師の茶番には気づいていただろう。
そして、このままだと自分たちもフェザーンの操り人形で終わるという所まで気づいてしまっていた。
「ああ。
少なくとも、あいつの為に泣く友人を責める気は起きんよ」
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