追憶 ハードラックの誓い
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第二次ティアマト会戦終了後の同盟首星ハイネセン上空に次々と参加していた同盟軍艦艇が帰還する。
彼らは史上空前の大勝利にもかかわらず、誰もが敗北に打ちひしがれているように見えた。
旗艦ハードラックは大破判定を受けながらも、ついにここまで引っ張ってくることに成功し、修理の後記念艦になる事が同盟議会において決定されていた。
それこそ、この船にはもう主が居ない事を端的に示していたのである。
そんな主なき船の一室に730年マフィアの面々が集っていた。
アルフレッド・ローザス中将は何もするわけでもなく天井を見つめ、フレデリック・ジャスパー中将は日頃の陽気な顔とは裏腹に鬱屈した気持ちをそのまま顔に出して押し黙る。
ウォリス・ウォーリック中将はモニターに映るハイネセンをただ眺め、ファン・チューリン中将はこの会戦の報告書を淡々と作成していた。
ヴィットリオ・ディ・ベルディーニ中将は何をするわけでもなく椅子にこしかけたまま動かず、ジョン・ドリンカー・コープ中将の落ち込みはひどく、飲めないブランデーのボトルを揺らしてただため息をついていた。
「すまない。遅くなった。
みんなご苦労だったな」
人形を連れて最後の一人である人形師が部屋に入る。
そして、主なき船の主に目を閉じて黙祷を捧げ、それに皆が習った。
「で、どういう理由で俺たちをここに呼んだんだ?」
ファン・チューリンがキーボードを叩きながら人形師に淡々と問いかける。
強引に集まってくれと頼んだのが、この人形師だったからだ。
ハイネセンに残っていた人形師は、ファン・チューリンと同じく淡々としかし決定的な一言を皆に告げた。
「アッシュビーが殺された可能性がある」
と。
「おい人形師!
冗談はよしてくれ!!
今はそんな戯言を聞く余裕は無いんだ!!!」
ジョン・ドリンカー・コープがたまらず叫ぶが、彼の顔にある紙束を叩きつけてそれでも淡々と言葉を告げる。
その抑揚の無さが彼の悲しみと怒りの大きさを表していた。
「……このハードラックの艦船識別信号が漏れていた可能性がある。
帝国軍のスパイからの報告だ」
ジョン・ドリンカー・コープの顔に出ていた怒りがみるみる吸い取られてゆく。
読み終わった彼はそれを他の面子に渡し、彼らもまた同じような顔になってゆく。
「アッシュビーが死んでしまったから言うが、アッシュビーは帝国内部に居るスパイから情報を得て作戦を立てていた。
そのスパイマスターが俺だ」
「……なるほどな。
あいつの作戦、えらく無謀なのに成功していた種はそれか」
ウォリス・ウォーリックが吐き捨てるように言うが、それに意を唱えたのはヴィットリオ・ディ・ベルディーニ
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