巻ノ百二十七 戦のはじまりその二
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幕府の軍勢は二十万の大軍で大坂に来た、そうして大坂城を東西南北で完全に囲んだ。その囲むのを最後まで見てだった。
幸村は苦い顔でだ、天守閣の最上階から後藤に言った。
「まさにでしたな」
「うむ、攻め時であったな」
後藤も幸村に苦い顔で応える。
「それがな」
「茶々様が外に出るなと言われ」
「攻めずじまいだった」
「全くですな」
「これはじゃ」
「あえて自ら勝機を逃したもの」
その二十万の軍勢を見下ろしながら言った、本丸の高台にある五層の天守閣からは実によく見えるのだ。
「何ということか」
「若し太閤様ならば」
秀吉、彼ならというのだ。
「やはりな」
「囲むのを待つ様なことはされず」
「攻めておられたわ」
「むざむざ」
「完全に囲まれるのを黙ってみてじゃ」
そしてと言う後藤だった。
「兵達の士気も落ちている」
「そうなってもいますな」
「茶々様はお気付きでないが」
「このこともですな」
「厄介じゃ」
「全く以て」
「今攻めてもな」
城からうって出てだ。
「最早退けることは難しい」
「兵糧も武具も確かにありますが」
「それでもじゃ」
まさにというのだ。
「篭城だけで勝てるか」
「そうした話はありませぬ」
孤城に篭城して勝ったことはというのだ。
「ですから」
「外に出ていれば」
「こうして囲まれることもありませんでした」
「難儀じゃ、確かに大坂城の堀は広く深い」
「鉄砲も弓矢も届きませぬ」
「大砲ですらな、しかしな」
「音はかなりです」
大砲のそれはというのだ。
「それも武器ですからな」
「その音で攻められますと」
「どうしてもな」
「危ういですが」
「茶々様はな」
その彼女はというのだ。
「このこともじゃ」
「ご存知ないですな」
「そうじゃ、果たしてどうなるか」
「それがしが何とかです」
幸村は後藤に言った。
「守り抜きです」
「真田丸でか」
「そしてです」
「頃合いを見てだ」
「はい、茶々様にもう一度お話し」
そしてというのだ。
「確かに難しくなりましたが」
「打って出る」
「そう提案します」
「そうしようか、わしもじゃ」
後藤もこう幸村に言った。
「囲まれたままではな」
「どうしようもないですからな」
「真田殿が踏ん張られてな」
「そうしてですな」
「戦の流れが変わったところで」
まさにその時にというのだ。
「もう一度な」
「茶々様にお話をして」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
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